シリーズ最新作! 『たべものがたり』をひと足先におしらせ

2009/02/25

 人間が生きていくうえで、もっとも身近な物とは何でしょうか。しかも、環境と密接な関係があるもの。「それは水だ!」と答えた方、正解です。もちろん、「いきもの」も当たりです。でも、答えは「水」や「いきもの」だけではありません。もう一つ、あげるとするなら、「たべもの」が正解に入ります。
 環境問題を考えていく上で、切り離せない「食」。このたべものをテーマにした本が3月に発売されます。タイトルは『たべものがたり』。「未来図書室」では、環境や経済、社会をテーマにしたシリーズ、『1秒の世界』『みずものがたり』『気候変動 +2℃』などを全国の学校に寄贈してまいりました。『たべものがたり』はこのシリーズの最新作となります。

 発売を前に、この本の企画・編集者であるThink the Earthプロジェクトの上田壮一さんが『たべものがたり』についてじっくり語りました。

「たべものが地球と、どう結びついているのか。『たべものがたり』を手に取った子どもたちには、たくさん想像してほしい」

 上田さんが語るように、このシリーズには一貫したこだわりがあります。それは「覚えるのではなく、想像するための本」であること。友だちの喜びや悲しみに共感する力、自分のこぶしが相手に与える痛みがわかる力。想像力が働く子どもは、誰かに強制されることもなく、自分から進んで地球にも、人にも、優しくなるはず。子どもたちにとって大切な「想像力」を育む本にしたい。そのような思いのもと、上田さんは今回の『たべものがたり』でも、手にとった子どもがたくさん想像できるように意識して創りました。また、「大豆の一生」「消化の仕組み」など、親子や友達同士で読んでもいいし、大人が読んでも楽しめるようになっています。

 なかには、クイズのページもあります。質問は「種の写真を見て野菜の名前を当てる」というものです。食卓で目にする野菜はもともとは種だった。当たり前のことなのだけど、忘れていたことを思い出させてくれます。クイズの答えのページで、みずみずしい野菜の写真は高知県で有機農業を営んでいる山下農園から、採れたてのものを送ってもらい撮影したものです。スーパーに並ぶニンジンや大根の葉は短く切られてしまいます。が、畑の中にいたときの葉っぱは、とても長いことに気づいて驚く子もいるかもしれません。好奇心をくすぐられて、気がつくとページをどんどんめくってしまう本だといえます。


たべものがたり

『たべものがたり』(山本良一:企画監修 Think the Earthプロジェクト:編著/ダイヤモンド社)


 旬の魚や牛肉の屠場の様子について、示したページがあります。

「普段、しゃけやぶり、ステーキなどの魚や肉は、私たちが接するときには切り身になっています。『食べる』ということは魚や動物、植物、それぞれの命をいただいていること。目の前のたべものがもともとは何だったのか、どこから来たのかを想像するだけでも感謝の気持ちがわいてくるのではないでしょうか」(上田さん)


■全国の小・中・高等学校へ寄贈します

「第1章から第3章までは、写真やイラストを中心にしています。まずは、たべものの面白さを味わって欲しいと考えました。第4章以降は、「環境」のテーマが色濃く出ています」(上田さん)

「気候変動は食の危機」を寄稿してくださったのは、企画監修者である東京大学教授の山本良一先生です。地球温暖化が進み続けると、生き物や水に危機が訪れます。農産物の生産性の低下をまねき、食糧危機が発生することも否定できません。食糧自給率が40%と、欧米諸国と比べて低い日本。危機に陥るとしたら、まず食糧の問題が浮上するだろうと言われています。「食」は環境問題ともかかわっていること。そして危機は決して他人事ではない。そのような側面があることも忘れてはいけません。山本先生からのメッセージは子どもたちが知っておくべき、日本の食の問題を端的にあらわしています。

 そのほか、「数字で見る食の今」「フードマイレージ」「食問題を解決する30の方法」など、興味深いページが続きます。ユニークなのは、「弁当の日」。香川県で中学校の校長を務める竹下和男先生が始めた活動で、現在、全国の小中高等学校などで展開されているユニークな「食育」です。月に一回やってくる、弁当を持参する「弁当の日」。給食の代わりに弁当を食べるだけじゃないか、などと思ってはいけません。なんと、弁当は子どもが自分自身で作って持ってくるのです。

「弁当を介して親子の時間が増えます。子どもは自分でおかずを作るため、親に卵焼きの作り方やブロッコリーをゆでる時間など、調理に関することを聞きます。そこから、親子の会話が生まれます。親が自分に時間を費やしてくれることに、子どもは敏感です。年々、減少している暮らしをテーマに親子で話し合う時間。これを取り戻そうというのが『弁当の日』を始めた竹下先生の狙いです」(上田さん)

 2008年末までに、283校もの学校が参加しており、全国に広がりつつあります。『たべものがたり』は全国の学校に寄贈されるので、学校の先生にこの活動を伝えたい。このような思いを込めて、上田さんは「弁当の日」を紹介しました。

 未来図書室はこれまで、環境や社会、経済をテーマにしたシリーズの書籍を全国の小・中・高等学校に寄贈してまいりました。『たべものがたり』もこれまでと同様、協賛社の協力を得て寄贈する予定です。前回の『みずものがたり』と同じように、写真一枚から紙質まで、スタッフの一人ひとりがもっとも適したものを選び抜いて創り上げました。

子どもたちが手にするにふさわしい、「上質」が味わえる本です。寄贈は2月末~3月を予定しています。もちろん、全国の有名書店でもお求めになれます。どうぞお楽しみに。
(取材・文 江口陽子)


上田壮一さん

Think the Earthプロジェクト 上田壮一さん