家庭で電気を創る ~家庭用燃料電池「エネファーム」~

2009/03/27

 私たちは環境への配慮として、日々、電気を節約し、「省エネ」を心がけています。もちろん、環境負荷を減らすには、省エネだけでなくさまざまな方法があります。エコバッグやマイ箸の利用、エアコンの温度設定など、実践している方も多いでしょう。実は、意外な対策方法として、「家庭で電気を創る」という選択肢があります。家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」をご存じですか。名前の通り、家庭で使う燃料電池。家庭で電気を創る。それを実現させるのがエネファームなのです。
 エネファームを設置すると、自宅で利用する電気を自分の家で作り出すことができます。電気を作るといっても、もちろん利用者は足踏みをしたり、漕いだりなどの労力は要りません。エネファームがしっかりと働き、電気を作り出してくれるのです。


 燃料電池「エネファーム」の発電の仕組みは、水素と酸素の化学反応が基本になっています。化学反応に必要な水素はガスや石油などから取り出し、酸素は空気中に存在するものを利用します。これが、なぜ環境によいといわれるのでしょうか。エネファームは発電のときにまったくCO2を排出しないわけではありません。が、その量が火力発電所よりも少ないので、結果的にCO2削減につながるのです。もう一つ、発電のときに発生した熱を捨てずに利用することもCO2削減に貢献します。
 水素と酸素が化学反応を起こすと熱が出ます。その熱をそのまま、お風呂や洗い物、暖房などのお湯を作るのに利用する。排出される熱を無駄にしないので、熱効率がいいといわれています。今まではお風呂や洗面所、キッチンでガスを燃やしてお湯を沸かしていました。が、エネファームは、発電しながら水を温めてお湯にします。その分だけ、CO2排出の削減につながるのです。
 これまで、たくさんの実証実験が繰り返されてきました。2005年、首相公邸に商用第1号機が設置され、家庭用燃料電池の実用化が始まりました。その後、大規模実証事業として、一般家庭に多数設置し、実験データを集めました。そして、2009年の5月、一般家庭向けに発売されるに至ったのです。東京ガスや新日本石油などの6社が世界に先駆けて順次販売を開始します。


■CO2削減にどのくらい貢献するのか

 これまでの火力発電と給湯器の組み合わせと比べて、エネファームだと、発電量が1kWhのとき、排出するCO2の量は45%も少なくなります。また、石油やガスなどの1次エネルギー消費量も33%、少なくすることができるので、エネファームは環境に優しいことが数字としても出ています。東京ガスの試算では、戸建住宅4人家族で、年間CO2削減量は1.5t。これは約3300m2のブナ森林が1年間に吸収するCO2の量に相当するといいます。
 必要なところで必要なだけ電気をつくるのがエネファーム。発生した電気はインバーターという装置を介して家庭用の交流に変換されます。そして、分電盤で電力会社の電気と一緒になって部屋のコンセントのところにまで運ばれます。コンセントにソケットを差しこめば、今までの電気と同じように、テレビや冷蔵庫など、電気を利用することができます。


パナソニック製エネファーム


荏原バラード製エネファーム


上:パナソニック製エネファーム
下:荏原バラード製エネファーム
画像提供:東京ガス


 東京ガスによると、エネファームの発電量は一般的家庭の日中の電気使用量をほぼカバーするといいます。電気が足りない場合は、今までと同じように、電力会社の供給する電気を利用することもできます。目安として、標準家庭では年間電気使用量のうち約6割がエネファームの電気、約4割が電力会社の電気になるようです。
 ただし、エネファームには解決しなければならない問題もあります。それは価格が高いことです。パナソニック製・荏原バラード製のエネファームはどちらも税込みで346万5000円(東京ガス販売)。月々の光熱費は安くなりますが、すぐに元が取れるものではありません。とはいえ、私たちにとって、何よりも誇れることは、エネファームの最先端技術を生み出したのは「日本」だということです。日本の環境技術は世界をリードする存在なのです。
 さらに、技術が進み、低価格の商品が現れる。すると、より求めやすくなるでしょう。総合資源エネルギー調査会需給部会「長期エネルギー需給見通し」によると、2030年度、エネファームの設置は250万台に達すると考えられています。今後は、自分の電気は家で作るという選択肢が当たり前に存在するようになるのでしょう。

(取材・文 江口陽子)