忙しさを言い訳にしない環境への取り組み ~埼玉県立浦和高校~

2009/05/19

 勉強に部活動、学校行事に忙しく、環境教育を取り入れたいのだが時間が足りない。取り組み時間が確保できないことを悩みにあげる高等学校は少なくありません。しかし、埼玉県立浦和高等学校の様子を見ると、時間は工夫次第で生み出せることがわかります。
 浦和高校は公立の男子高校です。文を尊び、武を昌(さか)んにするという「尚文昌武(しょうぶんしょうぶ)」が校訓。その通り、埼玉県有数の進学校でありながら勉強に偏ることなく、部活動や学校行事にも力を入れています。加え、環境教育に関してもしっかり、さまざまな活動を展開しているところが特徴です。
 2008年度、浦和高校は生徒にとって最も身近である校舎をエコ改修しました。改修内容は末尾に示す通りで、外壁等の断熱改修や節水型トイレの導入などを実施しています。結果、一年で約40tのCO2削減効果を得ました。これは6haの森林が吸収するCO2の量に値し、金額に換算すると213万円の削減となります。


■環境教育にあてる時間の作り方

 生徒たちはどのように生活を管理し、環境活動の時間を捻出しているのでしょうか。近年、公立高校の進路実績は有名私立高校などに比べると、数の上で劣る傾向にあるといわれています。が、浦和高校では2008年度、東京大学合格者36名を輩出。ほか、国公立大学、難関私立大学等に多数合格者を出しています。公立高校でありながらこれだけの実績を残すことができるのは、授業のカリキュラムが優れていることもありますが、生徒たちが多くの時間を勉強に費やしていることが大きいのです。それでいて、授業が終わると学校内には部活に励む生徒の声が響きます。部活だけではありません。学校行事もスポーツ大会のほか、将棋や百人一首などの文化大会、マラソンの強歩大会など盛んです。いつ、環境に関する活動に取り組んでいたのか不思議になります。

「生徒は朝早くから学校に来て、夜遅くまでいます。家には寝に帰るだけです」
 生徒の様子を語るのは環境教育の指導をしている永山将史教諭です。
 朝7時、浦和高校の教室にはすでに生徒の姿がみられます。授業が始まる8時40分までの間、彼らは自習に励んでいるのです。2、3年生になると、部活動が終わったあとに再び教室に戻り、夜の9時くらいまで勉強して帰る。これが生徒の1日です。
 環境に関する活動は部活動の開始前15分といった隙間の時間を利用します。会合などの長い時間を要するものについては、部活動を少し抜けるなど、時間を工面しながら活動時間を創出しているのです。

■エコ改修だけでない環境教育


屋上緑化の花たちが元気なのは委員会メンバーの雑草取りのおかげ 屋上緑化の花たちが元気なのは委員会メンバーの雑草取りのおかげ
屋上緑化の花たちが元気なのは委員会メンバーの雑草取りのおかげ


早朝、放課後は自習する生徒の姿があちらこちらに
早朝、放課後は自習する生徒の姿があちらこちらに


「校舎という箱物を変えるのが私たちの目的ではありません。『エコ改修検討委員会』だけでなく『環境教育検討委員会』も加えた二本柱で活動することが、このエコ改修事業の全体像になります」(永山教諭)
 生徒にとって、エコ改修は環境問題について考えるきっかけ。大切なのは環境についてしっかりと学ぶことにあると永山教諭は語ります。
 2008年、「エコ改修検討委員会」(座長 矢代克彦 ものつくり大学準教授)と「環境教育検討委員会」(座長 柴崎和夫 國學院大學教授)が設立・運営されました。校舎の改修が一段落ついた2008年9月、二つの検討委員会の成果を受けて、生徒の組織として環境委員会が設立され、活動が活発化します。

「活動は『高校生ならでは』を意識し、浦和高校の色が強く出ることを意識しました」
 各クラスには2名の環境委員が選出され、それぞれ「資源改修」「企業訪問」「植栽管理」など、7つのパートに分かれ活動を展開します。
 なかでも、「エコ・グランプリ」はクラスごとに電気・灯油の使用エネルギー量を求めて節約量を競うものです。アイデアを出したのは生徒たち。一番エネルギー使用量が少なかったクラスにエコバッチが授与されます。競技性や賞としてのバッチといったゲーム的な要素に男子高校生らしさが表れています。
 そのほか、国際交流パートではホームページに掲載されているエコ改修の部分を中国語、ドイツ語、英語で作成する活動をしています。外国語での質問にも応対しています。
 また、忘れてならないのが、保護者をはじめとするまわり人たちの働きです。大規模な改修も予算がつかなければ実現しませんでした。ここには、事務部の働き、そして埼玉県の行政、環境省のエコ改修事業を担当しているエコフローサポート本部などの協力がありました。多くの人の支えのもと、浦和高校は環境への配慮に取り組んでいます。生徒の姿から、大変さは感じられません。エコ・グランプリなどの楽しみも入れながら、時間を有効利用している。いきいきとした生徒たちの姿が印象的です。

※エコ改修実施内容

(1)外壁等の断熱改修
 外壁に断熱材を入れるだけでなく、教室と廊下の間にある腰板に埼玉県産の西川材を用いました。見た目にも暖かみがでました。灯油使用量は前年度比7%減を達成。


廊下側の腰板
廊下側の腰板


(2)サッシのペアガラス化
 サッシを二重ガラスにして断熱性能を高めました。また、窓側の一部は跳ね上げ式の小さな窓になっています。夏場の下校時は開放したまま帰ります。廊下側の上部の通気口を開けておくことで、夜の冷気が教室の中に入るようにします。これにより、朝の温度上昇を抑えることができるようになりました。

(3)節水型トイレ
 小便器は自動洗浄、節水仕様です。また、床も乾式になりました。これまで、床掃除に大量の水を流していましたが、乾いたモップですむようになり掃除もしやすくなりました。
 このほか、太陽光パネルの設置、グリーンカーテンなど、2008年度の夏休みには大がかりな工事が進められました。


太陽光パネルは遮光の役割も
太陽光パネルは遮光の役割も


左:藤岡幹芳 事務部長 右:永山将史 教諭
左:藤岡幹芳 事務部長 右:永山将史 教諭


(取材・文 江口 陽子)