2010年は「国際生物多様性年」、生物多様性って何だ!?

2009/06/26

 地球上には、いろいろな生き物が多様な生態系の中で生きています。そして、それぞれが異なった遺伝子を持ち、個性を発揮しています。生物多様性というと、「なんだか難しそうだな」と感じる方もいるのではないでしょうか。でも、私たちにとって、しっかりと理解しておかなければならないテーマでもあります。
 私たち人間はほかの生き物より秀でた、特別な存在だと思っている方も少なくありません。しかし、本当は地球上に暮らすたくさんの生き物たちの一員にすぎず、地球によって生かされている存在なのです。でも、ついつい、このことを忘れがちになってしまいます。

 環境省生物多様性地球戦略企画室の平野明徳さんは私たちが生物多様性によってたくさんの恵みを受けていることを説明します。

「植物の光合成によって酸素が作られ私たちは呼吸することができます。食文化が豊かなのも、いろいろな生き物がいるからです。ときには、生き物が医薬品の原材料になることもありますし、技術開発のヒントになることもあります。豊かな森は私たちに安全な飲み水を提供してくれます」

 私たちの周りに当たり前のように存在する生き物が実は私たちが意識しないところでたくさんの恵みをもたらしてくれているのです。

■生物多様性条約とCOP10

「私たち生き物の命はパズルのピースのように、一つひとつがとても大切な存在です。その中のひとつでも欠けてしまうと、全体に対して大きな影響を与えることもありえます」(平野さん)

 現実では、私たちのまわりには、絶滅に瀕する野生動植物がたくさんいます。日本に生息する脊椎動物・維管束植物の約2割が絶滅危惧種といわれています。原因はさまざまですが、珍しい生き物の乱獲や開発による生息・生育地の減少などがあげられます。人間には直接関係なさそうな生き物が絶滅したってかまわない。これは正しいことではありません。命はつながっているので、絶滅によって失われたバランスが、いずれ巡りめぐって思わぬ事態を招くこともあるのです。知らない間に、私たち人間の生存基盤が崩れていく可能性も否定できません。
 私たちはそれぞれの生き物の命がつながり、互いを支え合っていることを改めて知る必要があります。生物多様性とは何か。そして日本は、世界の中でどのような取り組みを進めているのでしょうか。

 世界的に見ると絶滅危惧種の保護や特定地域の保全の取り組みは古くから実施されていました。ラムサール条約やワシントン条約といった条約で保護してきた部分もあります。しかし、特定の生き物や地域に対する取組みだけでは不十分だとして、新たな包括的な枠組みとして1992年、「生物多様性条約」が採択されました。日本も1993年に締結。2009年2月では世界で191もの国と地域がこの条約を締結しています。
条約の3つの目的は以下の通りです。
・地球上の多様な生物をその生息環境とともに保全すること
・生物資源を持続可能であるように利用すること
・遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分すること

■開催国日本の取り組み

 締結した国々が集まる会議を「締約国会議(COP)」と呼びます。2010年には、生物多様性条約第10回目の締約国会議(COP10)が日本で開催される予定です。場所は愛知県の名古屋です。日本はCOP10の議長国として、有意義な議論が行われるよう、関係各国や国際機関等との調整を進めています。
 また、日本の里山で培われてきた自然との共生の概念を世界に発信し、COP10を契機に「国際SATOYAMAイニシアティブ」を立ち上げることが計画されています。里山とは都市でも奥山でもない中間的な地域。そこは、農業や林業など人間の働きかけを通じて創られました。豊かな生物多様性が維持されてきた二次的な自然環境ともいえます。日本の里山には自然共生社会を実現するためのノウハウが詰まっているのです。

 2010年は国際生物多様性年であることから、生物多様性の重要性を広く普及・啓発するための各種取り組みも計画されています。たとえば、こどもたちにも生物多様性を知ってもらうための、「いきものみっけ」という活動があります。こちらはいきものをみつけて教え合う活動です。忙しい毎日のなかで、忘れがちな自然の調和のありがたさを認め合えるように、 また、自覚なくうっかり壊してしまわないようにしたいものです。この活動では、ツバメ、モンシロチョウ、カッコウなどいきものをみつけたら、「いきものみっけ」のサイトに報告します。参加者が見つけた情報を公開し、それぞれ他者が見つけた生き物の情報を楽しむことができます。
 COP10の議長国となる、2010年、国際生物多様性年を機会に生物多様性について改めて考えてみるのもよいでしょう。


環境省生物多様性地球戦略企画室の平野明徳さん

環境省生物多様性地球戦略企画室の平野明徳さん

(取材・文 江口 陽子)