「考える」エネルギー環境教育~高崎市立馬庭小学校

2009/07/17

 環境教育を進めていく上で、子どもたちに何を伝えていくべきなのか。テーマは多岐にわたりますが、中でもエネルギーについて知り、考えることは重要なことです。人が文化的な生活を続け、存在し続けていくために、エネルギーに関する知識はなくてはならないものです。その一方で、今、私たちはエネルギーに関するたくさんの問題を抱えています。たとえば、石油などの資源には限りがあり、代替のエネルギーに関して、どうあるべきなのか、さまざまな意見があります。また、私たち人間がたくさんエネルギーを使用したことと、地球温暖化は密接なかかわりがあり、このような事実を知る必要があります。このような中、エネルギーは学ぶべきことの幅が広すぎて、何から伝えていったらいいのか迷うという声もあります。

 日本全国には、エネルギー教育に力を入れている学校がいくつかあります。その中の一つ、高崎市立馬庭小学校は経済産業省資源エネルギー庁の「エネルギー教育実践校」として、子どもたちに環境やエネルギーに関する授業カリキュラムを組んでいます。馬庭小がエネルギー教育実践校となったのは昨年度。今年は二期目になります。馬庭小では子どもたちに対して、どのような学びの場を設けているのでしょうか。

「昨年度は『体験』を通して、エネルギーについて児童なりの考えを持つことができました。今年は『考える』ことに重点を置き、来年度の『実践』につなげていきたいです」
 馬庭小学校の小池信晃教諭は語ります。
 具体的には、「昔の生活を学ぶ」「米作りの過程におけるエネルギー使用について調べる」などを通してエネルギーの安定供給の重要性を知ることが一つ。また、自動車工場の見学により、燃料電池や電気自動車について学ぶ授業も組まれています。座学では、水力発電の存在を知り、電気にはたくさんの発電の方法があることや省エネの大切さ、そして地球温暖化の問題について考えています。そのほか、さまざまなカリキュラムにより、エネルギーに関する偏りのない知識を得ることで、広い視野を持ってエネルギーについて考えられるような学習内容が組まれています。
 では、今年の『考えること』に重点を置いた授業とは、実際にどのようなことを実施しているのでしょうか。馬庭小のある日の授業風景をレポートします。


環境に優しい町を考える

 馬庭小は群馬県高崎市にあります。馬庭の子どもたちは、「ま・に・わ」っ子と呼ばれており、馬庭小では、「心身ともにたくましく、こころ豊かな馬庭っ子を育成する」を教育目標に定めています。このときの授業のテーマは、「環境に優しい未来の町」でした。対象は4年生。訪問した日の授業の前に、子どもたちは事前の準備の学習を進めています。班に分かれて、どのような町にしたら環境に優しくなるのか、みんなで考えました。今年の重点である「考えること」がここに実践されています。
 環境に優しい町を考える過程でヒントとなったものが「光電池」です。班ごとに用意された光電池をリード線で豆電球につなぎます。パネル部分に光があたると、豆電球が点灯。子どもたちは、光電池とは何かを目で学び、光による発電は火力発電と違ってCO2を排出しないことを体験しました。
 この光電池を使えば、環境に優しい町ができるはずだ。新たな気づきをもとに、子どもたちは班ごとで町の模型を製作しました。ソーラーハウスに信号機、メリーゴーランドなど、こんな町に住みたいという一人ひとりの願いが込められて町が出来上がっていきます。町が完成したら、班ごとに、「光電池とは」「光電池のよい点、欠点」「製作した模型の説明」などをまとめ、さらに自分たちが製作した模型の説明をわかりやすく画用紙にまとめました。



光電池で動くメリーゴーランド
光電池で動くメリーゴーランド



光があたると、メリーゴーランドが回ります
光があたると、メリーゴーランドが回ります



3年生に説明する4年生
3年生に説明する4年生



高崎市立馬庭小学校 小池信晃教諭
高崎市立馬庭小学校 小池信晃教諭



 馬庭小がとくに大切にしていることは「コミュニケーション」です。その日、教室には、4年生だけでなく、3年生も集まっていました。4年生は事前に製作した未来の町の模型を机の上に出し、3年生に「光電池」について、そして未来の地球に優しい町について説明を始めました。食い入るように説明を聞く3年生。一通り説明が終わると、4年生に質問をします。

「ソーラーハウスの材料は何ですか?」
「光電池と豆電球、リード線です。壁にはおりがみをはりました」

「信号機を作るのにどれだけガムテープを使いましたか?」
「たくさん使いました」

 純粋な疑問から、環境にかかわることまで、丁寧なやり取りが続きました。
 馬庭小のエネルギー教育は幅広く、必要な知識の基礎を学ぶものになっていました。とくに、体験と子供同士のコミュニケーションに重きを置いています。このときの経験がエネルギーに興味を抱くきっかけとなる子どももいるかもしれません。エネルギー教育は、将来のエネルギー開発技術者の誕生が期待できるという側面もあります。

(取材・文 江口 陽子)