環境問題はゴミや地球温暖化だけではない
~水について学ぶ「みずのがっこう」~

2009/08/25

 8月1日、原宿・渋谷の路上に、マイボトルを手に街を闊歩する数名のグループが出現しました。彼ら彼女らのもう一方の手にはカメラがあり、水を飲む人を撮影したり、グループのメンバー同士でおしゃべりしたりする人たちの姿があります。
 いったい、何のために? 道行く人たちは不思議そうな顔をして通り過ぎます。あるいは、楽しそうに撮影や会話しているメンバーに、少しだけ羨望のまなざしを向ける人もいました。
 「マイボトル」「カメラ」を持参している方たちが参加しているのは、ある「学校」の授業。それは、7月11日に開校した「みずのがっこう」です。水を通じて、社会や環境の問題について感じ、考える人が増えて欲しいという願いのもと設立されました。

「日本は“水リテラシー”が低いといわれています。蛇口をひねれば飲み水が出てくる。こんなに恵まれた国は世界中に数えるほどしかありません」
 日本は水が豊かにあるため、水は限りある資源であることを実感しにくい。このように説明するのは、「Water Planetみずのがっこう」の企画スタッフ、Think the Earthプロジェクトの風間美穂さん。世界には、日本のように水の豊富な国がある一方で、アジア・アフリカのように水不足に苦しみ、水の汚染が原因とされる病気で命を落としている子どもたちがいる国もあります。

「暑い夏、水を考えるきっかけをつくりたい」
 このような思いから、Think the Earthプロジェクトでは、2004年から「Water Planet」という活動を展開してきました。2008年3月にダイヤモンド社から発刊されたエコブック・シリーズ第2弾『みずものがたり』もThink the Earthプロジェクトの水を考える活動の一つです。今年から、“水を通じて地球や環境について学ぶ”場をネットワークする試みとして「学校(みずのがっこう)」という新しい活動が繰り広げられています。

 この日の授業は、「カメラ好き集合! 水とゆかりのある街を撮りおろすカメラワークショップ」というものでした。企画に賛同した地方の湧水販売企業の協力により、街には給水オアシス(マイボトルを持参した人が無料で日本の名水が飲めるスポット)が用意されています。参加者はグループごとに給水オアシスに向かって歩き、マイボトルに名水を入れ、街をめぐります。でも、単に街を歩くだけでは、参加者の満足度は高まらないのではないか。そこで、この授業では、参加者の共通点として「カメラ好き」であることを加え、水にゆかりのある地を撮影することにしました。そうすることで、参加者同士の会話が弾み、水についても関心が高まるのではないかと考えたのです。

■道路の下に埋まった水たち

 かつて、東京には小さな川が街中をめぐっており、渋谷・原宿のエリアには、「穏田川(おんでんがわ)」という名前の川がありました。高度成長期、道路を増やすため、そして洪水を防ぐためといった目的から、東京の川の多くが道路の下に埋められてしまいました。
 それまでの東京は、東京湾から海風が川の水に沿って街中に運ばれていましたが、その大切な役割を果たしていた川は埋められ、道路になり、マンションやビルなどの建物に囲まれ、風の道は途絶えるようになりました。もちろん、川を埋めることで道路用地が増え、私たちの生活を豊かにする一助となったわけですから、一方的に非難することもできません。
 このような歴史がある中、今でも少しだけ当時の面影が残っている場所があります。原宿にある「キャットストリート」という通りがそうです。かつて、この道は穏田川でした。「キャットストリート」は曲がりくねった小路です。その様子から、川を埋めて道をつくったことがうかがえます。街の様子を撮影した参加者の中には、いつも慣れ親しんでいたキャットストリートが違ったものに写ったに違いありません。今回の授業では、キャットストリートなどの穏田川にまつわる地を探索しカメラに収めました。集まった人は20代から30代くらいまで、年齢も近く、カメラという共通点があるので話が合います。日本各地の名水を楽しみながら、撮影していました。



「給水オアシス」でマイボトルに日本の名水を注ぎます
「給水オアシス」でマイボトルに日本の名水を注ぎます。


この場所に橋がかかっていました
この場所に橋がかかっていました。



渋谷・原宿エリアの水を撮影中
渋谷・原宿エリアの水を撮影中。



「みずのがっこう」では、このようなワークショップのほか、親子で参加するクイズ、シーカヤックという海を旅する道具に乗るツアー、水のスペシャリストの話を聞く座学など、さまざまな形の授業を8コマ、用意しています。期間は7月11日から9月30日まで。参加資格は「水に関係のある人」、つまり私たち全員が対象です。

■水について伝える人になってほしい

「初めから学校という枠組みを考えていたわけではありません」
 このように話す風間さんは、最近、まわりの意識が変わったことを肌で感じている一人です。数年前に比べると格段に、環境問題に関心を抱く人が増えました。社会の流れとして、個人の環境意識の高まりとともに、水への関心を深めている人も少なくありません。
「何かアクションを起こしたいのだけれど、一人では何もできないし、何をしたらいいのだろう」
 そのように考える人が一歩踏み出せる機会があればいいのではないか。水について学ぶ場を設けたい。さらには、学んだ人が今度はまわりの人たちに水について伝える人になってほしい。風間さんたちはそう考え、スタッフでアイデアを出し合っているうちに、ふと、自身が進めようとしていることが「学校」という形に似ていることに気づきました。そして、「みずのがっこう」へアイデアがつながったといいます。9月末で今期は閉校しますが、あとで今を振り返ったとき、日本でも水への意識が高まったことに「みずのがっこう」をはじめとする「Water Planet」の活動が貢献していたと実感できる日が来るかもしれません。

(取材・文 江口陽子)




右:風間美穂さん、左:曽我直子さん
右:風間美穂さん、左:曽我直子さん
(Think the Earthプロジェクト みずのがっこう)


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みずのがっこうでは、誰でもが参加できるチャリティ、「待ち受けFlashのダウンロード」を実施。配信料105円の
うち50円(アフガニスタンの7人家族1日分の飲料水代に相当)が寄付されます。みずのがっこうのサイトでダウンロードできます。