未来を担う子どもとエコプロダクツ2009

2009/12/24

 12月10日、日本最大の国際展示場「東京ビッグサイト」は、会場を埋めつくす来場者の熱気で沸きました。約18万人という過去最高の人が訪れたエコプロダクツ2009。今年のテーマ「問い直せ、日本の力 ソーシャルパワー元年」という言葉には、企業の力だけでなく、行政、自治体、NPO、学生、そして市民、そうしたすべての社会の力を結集することが必要だというメッセージが込められています。その言葉通り、多様な出展者とともに、訪れる人も、ビジネスマンから一般消費者、学生などすべての力が集まる展示会になりました。
 ここ何年か来場者の中でも子どもの数は毎年増加を続けてきました。ところが、今年はインフルエンザの影響で昨年よりも減少したといいます。それでも、3日間で約1万8000人程度という数が示す通り、会場には子どもたちの姿が多くみられました。これに応えるかのように、例年以上に子どもたちが参加する「ワークショップ」スペースを広く設けている出展ブースが目立ちました。

■子どもたちに自社の「未来」を伝えたい

 なかでも、展示スペースの大部分を子どもが参加するワークショップに費やしていたのはソニーグループです。ソニー製品のなかには、テレビの前から人がいなくなると自動で画面を消す「人感センサー」機能が搭載された液晶テレビや、環境に配慮したパッケージ設計を施したVAIO「NWシリーズ」、非常に困難とされてきたアルカリボタン電池の無水銀化に成功したミニチュア電池「水銀ゼロシリーズ」といった、環境負荷を低減する製品が多数ありますが、今回の展示ではこれら現状の製品は全て後ろ側に設置し、前面には現在開発中で、まだ世に出ていない未来の製品「バイオ電池」のワークショップが広くスペースをとっています。
 現在、ソニーはぶどう糖を利用して発電するバイオ電池の開発を進めている最中です。ぶどう糖は植物が光合成で作りだされます。石油と違って、地球上に豊富に存在する再生可能なエネルギー源であり、バイオ電池による発電はCO2排出の点からも環境負荷の低いものとして注目されています。
 実験開始の時刻になると、ワークショップに用意された机には子どもたちで埋まっています。指導員の方の説明にしたがって、まずはフルーツのブドウをしぼって、果汁のとりだしからスタート。次に、そのブドウ液を一人ひとりがソニーのバイオ電池にたらします。指導員の方の説明ですと、発電すると、目の前のプロペラが電気の力で回るといいます。子どもたちは「本当に電気が起こるのかなぁ?」と心の半分を占めているのは心配な気持ちです。

ソニーのバイオ電池 いよいよ発電、プロペラは回るのか? 「ぶどう糖ってどんなもの?」説明員の質問が飛びます
(左)ソニーのバイオ電池  (中)いよいよ発電、プロペラは回るのか? (右)「ぶどう糖ってどんなもの?」説明員の質問が飛びます


 全員が液をたらし終わり、線がつながれると、目の前のプロペラが回り出しました。会場からは一斉に拍手がわきます。
「子どもたちには『知る』だけでなく、体験もしてほしいと思い、ワークショップのスタイルを設けました」(ソニー広報センター)
 石油などだけでなく、食べ物のような身近な“ぶどう糖”からでも電気は起こるということを伝えたかったといいます。未来の地球を担う子どもたちには、今発売している人気商品だけでなく、未来のソニーの技術にも触れてほしい。ソニーのブースには、このような強い思いが表れていました。


環境に関する校外学習の場として定着したエコプロダクツ展 実行委員長 東京大学教授 山本良一先生
(左)環境に関する校外学習の場として定着したエコプロダクツ展 (右)実行委員長 東京大学教授 山本良一先生

生物多様性コーナーのジオラマ 燃料電池の仕組みを説明するパナソニックブース
(左)生物多様性コーナーのジオラマ (右)燃料電池の仕組みを説明するパナソニックブース

■国際色の豊かさは子どもたちにも

 今年のテーマで目立ったものとして「生物多様性」があります。来年の10月には、名古屋で「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)が開催されます。日本は議長国として、準備を進めている真っ最中。それにあわせ、生物多様性に関する出展もたくさんありました。環境省では生物多様性のコーナーを主催し、生物多様性とは何かといった説明から、ジオラマなどの目で理解するものまで、さまざまな角度で、生物多様性保全の大切さや企業にとっての生物多様性の重要性をわかりやすく伝えていました。
 日本国民の中には、来年の「生物多様性条約第10回締約国会議」で日本が議長国になっていることも知らないという人も少なくないでしょう。地球温暖化防止について、私たちが何らかの関心を示すようになったのはここ何年かのこと。それ以前は、国民の問題意識は低く、取り組みはしない方針を打ち立てている企業すらありました。今は、まだ「生物多様性」という言葉さえもよく知られていない状況にありますが、COP10次第では、今後、皆の関心が集まり、活動が活発化することに期待できそうです。

 そして、今年の参加者の特徴として特筆したいのは、海外の子どもたちが多いと感じられたこと。
「具体的な人数のデータがないのであくまで雑感ですが、インターナショナルスクールの生徒の方が例年より多かったと感じています」(エコプロダクツ広報事務局)
 今回の展示会にはインターナショナルスクールが2校参加しました。ボランティアで生徒を引率していた台湾出身のある保護者は次のように語っています。
「日本の環境技術は進んでいるので、子どもたちに見せたかった。このような展示会は学校では学べないことに触れられるので、いい機会になります」
 世界一だといわれている日本の環境技術は海外からも注目の的です。先端の技術を子どもたちに見せたい。このような大人の思いは、日本も海外も同じなのでしょう。

 記者説明会では、実行委員長の山本良一先生から国民の皆様にはさらに多くの関心を持っていただきたいというお話がありました。今年は、「ソーシャルパワー元年」を掲げていますが、展示会からの様子では、日本だけでなく、世界中の人たちが将来にわたって、環境への強い関心を持つに違いないと感じました。

(取材・文 江口 陽子)