都会の風を電気に変える~東京臨海風力発電所~

2010/01/30

 太陽と風。私たち地球には自然の恵みがたくさんあります。これら自然を利用して電気を起こせば、火力発電のようにCO2を排出することもないし、石油が枯渇することを心配しなくていい。環境負荷低減、石油代替エネルギーなどの点から、世界中で自然の力を利用した発電が古くから注目されてきました。最近は、ソーラーパネルを屋根に乗せ、太陽光発電を取り入れている家もあります。太陽光、地熱、風力などの自然を利用した発電は私たちにとって、より身近なものになりました。

 中でも、ひときわ目を引くのが、大きな風車を回して電気を起こす風力発電。地平線の彼方まで続く巨大風車の列。風を受けた羽がゆっくりと回る壮大な風景。写真を眺めているだけで、どこか別の世界に足を踏み入れたような感覚にさせられます。
 日本の風力発電所は九州の長崎や北海道稚内市のほか、岩手県、山口県と各地に建てられています。都心部には土地がないため、あまり見かけないように思われますが、実は東京にもあります。東京臨海風力発電所は東京都が地球温暖化防止対策の一環として、民間企業である電源開発と豊田通商の二社と協力しあって事業を進めて設立したものです。

東京臨海風力発電所  東京臨海風力発電所
東京臨海風力発電所。風向きが変わると、風車の向きも合わせて変わる。

■発電の仕組みは簡単そうで奥深い

 風車は頭上高く、地上44メートルのところにあります。校庭にあるやや大きめな木でさえ高さは4~5メートル。風車は木の約10倍もの高さになります。回転する羽の半径はなんと26メートル。羽の一番高いところは地上70メートルにも達します。

「世界ではもっと大きなものがたくさんあります」(電源開発 技術発電グループ 課長代理 渡辺 健太郎さん)

 近くに行くと、見上げるほどの高さの風車ですが、これでも小ぶりな方だといいます。
 ところで、風車はどのようにして発電するのでしょうか。
 風が吹くと、ブレードと呼ばれる羽が回り、風車の中にある発電機で電気が起こされ、送電されます。こう書くと、とても単純な装置のように感じられますが、実用に合わせていろいろな配慮がなされています。
 たとえば、台風の日はどうなるのでしょう。普段、風車の羽は風向計が示す風上に向くようになっています。ただし、風が来ればいつでも回転するわけではありません。台風が到来して極端に風が強くなったとき、羽を回すと壊れてしまう恐れもあるといいます。風速25メートルを超えると、羽そのものを水平にし、風が来ても通り抜けるようにすることで、羽が回転しないように設計されています。
 東京臨海風力発電所には2機の風車がありますが、この二つは地下に埋設されたケーブルでつながれており、それぞれで発電された電気が送電線に送られます。そのほかの働きとしては、発電した690ボルトの電圧を効率よく送るために数キロボルトもの高い電圧に昇圧するなど、見えないところにさまざまな機能があります。

風速と出力
風車の横には、風速と出力が表示されている

点検
点検のための準備を進めています。

■土地が狭い日本の風力発電事情

 日本はエネルギー分野での技術が進んでいるといわれていますが、風力発電の導入量をみると、アメリカ、ドイツ、中国などが多く、日本は下位に位置しています。風力発電は地平線が見えるくらいの広大な土地を有しているアメリカなどが向いています。
 その中、土地の狭さに関係なく発電できる洋上風力発電が注目されています。これは文字通り、海の上に風車を建てて発電するものです。国土が狭く海に囲まれたイギリスでは洋上風力発電プロジェクトに期待が寄せられ、海上に風力発電所が建てられています。
 日本の洋上風力発電は大学と電力会社が共同で研究開発を進めている最中で、実用化はまだ先のようです。日本は海に囲まれているので、海洋風力発電は適しており、期待が寄せられています。ただし、海の上でも風車が倒れないようにしなければならないし、潮風にあたってもさびないような素材にしなければなりません。実現するにはたくさんの困難を越えなければならないようです。
 エネルギーは一つの方法にこだわらずに、いくつかの方法を採用することが理想だとされています。とはいえ、風力に限らず、太陽光や地熱などの発電には大きな課題があります。それは、コストが高いことです。今後、より安くするには、一度にたくさん電気をつくることが一つとしてあります。その流れからいっても、今後は、風力発電は大型化していくだろうと、渡辺さんは言います。
 大型化の流れに乗って、もっと安くて安定した電気が風力発電で出来るようになるのか。今後の風力発電に寄せられる期待は小さくありません。

(取材・文 江口 陽子)