ご当地食材のお弁当づくりにチャレンジ
~東温市立重信中学校(愛媛県)~

2010/02/27

 2009年3月、『たべものがたり』の発刊とともに募集した「ご当地食材のお弁当」。【小学生の部】【中学生の部】【高校生の部】に分かれ、一次審査、二次審査が執り行われました。
 全国の小中高校生から寄せられた、1932点もの応募作品はどれも力作ぞろい。審査委員からは「二次審査に残ったものは、いずれもレベルが高く甲乙つけがたい」という声が聞かれるほどでした。審査の結果は募集企画のページに掲載しましたので、ぜひともご覧ください。

http://mirai-tosyositu.jp/plan/obentou/index.html

 参加者のなかには学校全体で取り組み、応募したところもあります。【中学生の部】で入賞した東温市立重信中学校は、一校で最多の317点もの作品を応募し、そのうちの4作品が入賞となりました。指導を担当したのは家庭科で教鞭をとる清水直美先生です。多くの作品が生み出されたのは、子どもたちが自ら楽しんで制作したからにほかなりません。清水先生から子どもたちの様子をおうかがいしました。

 重信中学校は愛媛県東温市にあります。東温市は古くから松山市のベッドタウンとして人口が増えてきた地域で、工場や食品加工施設などが多くあります。その一方で、農業も盛んで、みかんを始め、水稲や麦、野菜などの作物を出荷している土地でもあります。そのため、作品に登場する食材は種類豊富。農作業に従事する祖父母と協力して、自身で栽培したなすを食材にした生徒もいました。

 清水先生が募集企画「ご当地食材のお弁当」を知ったのは、学校で作品募集のビラを目にしたときでした。子どもたちが自分でお弁当をつくるだけでなく、地元の食材について調べて、レポートにまとめる。これは夏休みの宿題に適していると感じ、二年生、三年生を対象に「お弁当」を課題としました。


たべものがたり


■お弁当づくりは初めてという生徒も

 夏休みに入る前、三年生はすでに地元の食材に関する学習は終わっています。でも、学習が済んでいない二年生については、地元の食材に関する学びを進めておかなければなりません。そこで、家庭科の授業を利用して、愛媛県は日本一のキウィ産地であること、みかんは全国一を争っていること、そして、地元にはおいしい地鶏があることなどのヒントを与え、子どもたちが自主的に調べられるようにしました。

 調べ学習というと、最近では家に居ながら、ネットで簡単にすましてしまうことも少なくありません。ところが、重信中学校生徒はフットワークが軽い。近所のJAに足を運んで出荷している野菜についてヒアリングする、親戚の農業従事者の農作業を手伝いながら作物について理解するなど、身近な体験を通して学んでいく生徒が多数いました。

 調べ学習が終わったらお弁当制作にはいります。男子生徒には、お弁当づくりが初めてだという生徒も少なくありません。中学生になると、夏休みは部活で忙しい時期です。普段でしたら、お弁当をつくる機会はなかなか得られないところです。子どもたちにとって、夏休みの課題は貴重な体験を得る機会になりました。

 お弁当をつくるにあたって、まずはメニューを決めなければなりません。清水先生が示したサンプルや、おとうさん、おかあさんのアドバイスはとても貴重な情報源です。なかには、食材を調達するために、おとうさんといっしょに釣りに行き、釣った魚をさばくところから始めた子どももいました。
「いつもなら、叔母さんから差し入れられ、なんの気なしに食べていた野菜がお弁当になることで、今までとは違った新鮮な食材に変わったこどももいました」(清水先生)
 小さなお弁当箱におかずを詰めていくなかで、たくさんの驚きがありました。

■お弁当が思いやりを育むきっかけに

 つくったお弁当を誰が食べるか。今回の課題では、指定はしていません。子どもの多くは自分でつくって、自分で食べたようです。ところが、ある子どもは弟のために、お弁当をつくることを決めました。その弟はピーマンが大嫌い。本来なら、ざっくりと切ったピーマンをたくさん入れるところ、丁寧に細かく切って量を少なくして入れることにしました。
「自分がつくったお弁当を家族の誰かに食べてもらう。それが家族を思いやる気持ちにつながります。仕事で疲れたお父さんのために、ダイエットしているお母さんのためにと、お弁当づくりが相手に喜んでもらうきっかけとなった子どももいたようです」
 清水先生が語るように、お弁当づくりにチャレンジすることは、これまでにない新しい経験を得る機会になったようです。

 清水先生にとっても、今回の課題は初めての経験です。夏休みの宿題ですので、教師は子どもの作品を評価しなければなりません。300件を超えるレポートを一つひとつ丁寧に見ていく作業は根気のいることです。それでも、レポートの紙面に残った子どもが真剣に考え工夫した跡を楽しみに、最後の一点まで、しっかりと読むことができたといいます。

 先日、重信中学校では調理実習の食材に「五色そうめん」と「じゃこてん」が用いられました。これらの食材は愛媛の特産品で、夏休み課題で、ある生徒が扱ったものです。「ご当地食材のお弁当」の募集企画は終わりましたが、そこで得たものが次の授業に繋がっています。
 清水先生は、2010年も前年と同じように、ご当地食材のお弁当の課題を出す予定でいるといいます。

(取材・文 江口 陽子)