本業に密接した取り組みの効果
~佐川急便の環境負荷低減活動~

2010/03/29

 宅配便輸送を中心とした物流事業者である佐川急便の活動に目を向けると、そこには「天然ガストラックの導入」「アイドリングストップの実施」「モーダルシフトの推進」など、本業と密接になった活動が主であることがわかります。佐川急便は2012年度までに、2002年度比でCO2を6パーセント削減することを目標値に掲げています。この決して低くない値をクリアするのは容易なことではありません。その中、大きな効果をあげている本業での取り組みを紹介します。

 多岐にわたる活動のなかでも、積極的に取り組んでいる活動が「天然ガストラック」の導入です。一般的に、輸送に用いられるトラックは主にディーゼル車になります。これと比べて、天然ガストラックは約20パーセントもCO2排出量の削減が可能です。佐川急便は荷物を運ぶとき、天然ガストラックを積極的に用いることで、CO2削減に貢献しようと考えました。
 ただし、難しいのは、天然ガストラックの燃料補給は、一般のガソリンスタンドではできないところにあります。途中で燃料である天然ガスが足りなくなったらトラックは動きません。そこで、独自に全国に23カ所、天然ガスを充填できるように設備を整えました。
「2010年3月現在で累計4355台を導入しました。これは日本国内の天然ガストラック普及台数の約24%にあたり、民間企業では最も多い台数となります」
佐川急便 広報部 小泉友紀氏は説明します。物流という限られた産業内だけでなく、日本のどこの会社よりも、もっとも多くの天然ガストラックを導入している。このことからも、佐川急便が環境への取り組みに力を入れていることがわかります。


天然ガスの充填個所を設備
天然ガスの充填個所を設備


特急コンテナ電車「スーパーレールカーゴ」
特急コンテナ電車「スーパーレールカーゴ」


■環境負荷の少ない鉄道輸送を利用

 もう一つ、積極的に取り組んでいるのがモーダルシフトです。これは、輸送をトラックだけに頼るのではなく、鉄道や船舶などに切り替え、CO2削減を図る取り組みです。1トンの貨物を1km運ぶとき、鉄道のCO2の排出量はトラックの約1/8ですむといいます。とくに、東京大阪間は交通量が最も多く、環境への負荷が大きな地域です。佐川急便では、この区間の輸送の一部を特急コンテナ電車「スーパーレールカーゴ」を利用することで、大幅にCO2排出量の削減効果を得ました。しかも、この特急コンテナ電車はJR貨物と共同で開発したオリジナルのものです。
 鉄道輸送のほうが、環境負荷は少ないとわかっていても、これまでなかなか鉄道の利用がなかなか進まなかったのには理由があります。それは、輸送にかかる時間が障害になっていたからです。宅配便はお客様から受け取った荷物をいち早く届けるという使命があり、日本国内への配送なら、原則お客様が荷物を出した日の翌日には届くようにしなければなりません。そのためには、鉄道輸送でかけられる東京-大阪間の輸送時間は6時間が限界で、従来の貨物列車では、この条件を満たすものがありませんでした。「スーパーレールカーゴ」は従来のものと比べて、最高時速130km/hと、圧倒的な速度を誇っています。しかも、早く届けるために、速度を速めただけではありません。貨物ターミナルに到着後は方面別に分けられたコンテナを、そのままトラックに積み替えることで、さらに配送にかかる全体の時間を短縮しました。

■京都の会社としてできること

 佐川急便は日本の物流企業の中でも、早い時期から環境問題へ高い意識を持っていました。きっかけとなったのは、1997年気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)のときです。開催地である京都は佐川急便の創業の地でもあります。国際会議が地元で開催されることで、環境保全への取り組みを強化しなければならないと心を新たにしたそうです。

 その後、2003年、日本企業としては初、世界でも運輸セクター唯一の企業として、WWF(世界自然保護基金)のクライメート・セイバーズ・プログラムに参加しました。このとき、冒頭に触れた佐川急便の目標値CO2削減6パーセントという数値が明らかにされました。

「最初は、できることから始めようと、アイドリングストップに取り組みました」(小泉氏)
アイドリングストップを徹底するために、ドライバーの一人ひとりにキーチェーンを渡し、体からキーが離れないようにしました。そうすることで、ドライバーがトラックから降りるときは、必ずエンジンを切り、キーを抜くようになり、やがてアイドリングストップが劇的に浸透していきました。
 一方、目標達成にはもう少し効果の高い取り組みの必要性を感じるようになりました。そこで、主な輸送手段であるトラックそのものを何らかの形でCO2削減できるものに変えられないか。このような考えのもと、浮上したのが天然ガストラックのアイデアです。

 最近の取り組みとしては、車両を使用しない「サービスセンター」の設置があります。都心を中心に、台車や自転車を利用した集荷・配達を行うための小規模配送拠点です。台車や自転車だから、駐車スペースの少ない都心でも、車をとめる場所に困ることはありません。地域の女性スタッフの活躍も増え、従来の男性だけの職場というイメージから、多様な人材の活用という面でも新しい取り組みになっています。
「環境にいい運転」は地域貢献にもなり、安全の向上につながります。本業に密接した環境への取り組みは、多岐にわたる効果があることを佐川急便の社員一人ひとりが深く理解しています。


佐川急便株式会社 広報部 小泉 友紀氏
佐川急便株式会社
広報部
小泉 友紀氏

(取材・文 江口 陽子)