「ご当地食材でお弁当をつくろう!」
高校生の部、大賞受賞作品
~鳥取県立智頭農林高等学校~

2010/03/29

 ダイヤモンド社『たべものがたり』寄贈プロジェクトとの連動企画、「ご当地食材でお弁当をつくろう!」には、全国の小中高の学校から1932点あまり、ご応募いただきました。その中、高校生の部で大賞を受賞した作品はお弁当の細部にまで「地産地消」を意識したものでした。
 「地産地消」といっても、単に、地元の名産品を集めてお弁当に仕立てただけではなく、手も心もかけた芸術品といえるレベルのものです。受賞したのは、鳥取県立智頭農林高等学校の門脇彩華さん。お弁当の制作にあたり、指導にあたった、家庭科の天野聖子先生にお話をおうかがいしました。

 門脇さんのお弁当は「究極のご当地」ともいえる材料でできています。野菜のほとんどは、なんと、門脇さん自身、あるいは、友人が栽培したものです。しかも、材料だけでなく、弁当箱そのものや弁当袋まで、すべてが手作りである点に驚かされます。野菜、弁当箱、弁当袋。ここまで、徹底した「自前主義」を貫けたのには理由があります。

高校生の部で大賞を受賞したお弁当
高校生の部で大賞を受賞したお弁当


■学校内の能力を結集したお弁当

「私たち、智頭農林高校には、園芸科学科、森林科学科、生活環境科の三つの学科があります」(天野先生)
 門脇さんは生活環境科の生徒です。「究極のご当地」を実現するために、校内の園芸科学科、森林科学科に協力を依頼しました。園芸科学科では、学校内にある農園で、ニンジンやブロッコリー、大根などの作物を栽培しています。
「せっかくだから、学校でとれた野菜を材料にしてみたらどうだろう」
 天野先生は、門脇さんが自身で考えるようにアドバイスは最小限にとどめました。この数少ないアドバイスが、門脇さんの仲間が心をこめて育てた野菜をお弁当の材料として使うきっかけとなりました。

 門脇さんはお弁当箱まで手づくりにしました。薄い板状の木を曲げてつくった「わっぱ」の弁当箱をこしらえたのは森林科学科のメンバー。授業で、木材の有効利用と加工技術を学習し、お盆や看板を制作しています。森林科学科の生徒にとって、「わっぱ」の制作は授業の延長のようなもの。「ご当地食材でお弁当をつくろう!」の企画について説明して、協力してもらったといいます。

 そもそも、門脇さんが「ご当地食材でお弁当をつくろう!」の企画に応募するきっかけとなったのは、天野先生のすすめからでした。天野先生は募集要項を手にして企画の存在を知りました。そのとき、毎日素敵な手づくり弁当を持ってくる生徒がいることを思い出しました。それが門脇さんだったのです。最初、門脇さんは企画の話を聞いたものの、応募するかどうか迷いがあったようです。しかし、高校3年間の総まとめとしてせっかくなので応募してみようということになりました。

 天野先生は授業で食育、調理実習や被服制作などを指導していますが、門脇さんの優れたセンスにはいつも驚かされるといいます。調理だけでなく、被服制作では自分で甚平をこしらえるほどの腕前があり、キメの細かい作業はプロとして通用するレベルです。この能力は弁当袋の制作に活かされました。手づくりの弁当袋は薔薇の花をあしらいましたが、これは難易度の高いものです。花の形を表現するのに苦労したといいます。

学校内の農園。大根が育ちました!
学校内の農園。大根が育ちました!


■お弁当の心は「感謝」

 門脇さんの卓越した能力はどのようにして芽生えたのか。それは、母親の影響が大きいと考えられます。門脇さんのお母さんは、料理と裁縫の達人で、門脇さんは小さいころから、母親の手づくりの服とおいしい料理に囲まれて育ちました。高校3年生の門脇さんは4月から新社会人として、母親のもとを離れた生活が始まります。
「これまでの感謝の気持ちを込めたい」
 門脇さんの作品の根底には、「大好きなお母さんへのありがとう」があります。

 野菜がふんだんなのも、お母さんの健康とダイエットに配慮してカロリーを抑えた結果です。その一方で、カロリーを低くするだけでなく、しっかりと栄養を摂ってもらいたいという思いから、鶏肉のささみを材料の一つに選びました。カロリーは低いけれど良質のたんぱく質が摂れます。また、弁当袋の花も実は、お母さんが好きだからというのが、こしらえるきっかけでした。

「お弁当づくりを進めていくうちに、門脇さんが変わっていくのがわかりました」(天野先生)

 天野先生は門脇さんのそばで彼女を見守っているうちに、少しずつ門脇さんが自信をつけていくのがわかったといいます。もともと、調理や被服に高い能力を発揮している門脇さんでしたが、彼女にしてみればこれらは当たり前のことでした。しかし、天野先生と話し合いながら、試行錯誤の末、自身のアイデアを形にしていく。この過程で、小さな成功が自信に繋がっていきました。門脇さんは4月から美容系の仕事に就く予定です。新しい門出にあたって、大賞を受賞した経験が糧になることでしょう。

学校内の掲示板に大賞受賞のお知らせが貼りだされました。
学校内の掲示板に大賞受賞のお知らせが貼りだされました。


(取材・文 江口 陽子)