本を読んで考える子どもたち
~中央区立晴海中学校の図書室~

2010/06/28

 4月に、ダイヤモンド社は『earth code 46億年のプロローグ』を協賛社の協力を得て全国の学校へ寄贈しました。このほかにも、「未来図書室.jp」でお伝えしている通り、食べ物、水、生き物など、身近にあるものをとりあげ、地球の問題と私たちの暮らしについて考える書籍を提供しています。

 本が置かれる場所は、寄贈先の学校によって、理科室、家庭課室とさまざまです。今回紹介する東京都中央区立晴海中学校が選んだ場所は図書室です。毎日、昼休みになると、図書室は生徒たちの姿でにぎわう、本好きの子どもたちがたくさんいる学校です。近年、活字離れが問題になっていますが、晴海中学校には無縁のことのようです。図書司書は山井攝子(やまい・せつこ)先生。図書室にどんな仕掛けをしたのでしょうか。

 晴海中学校があるのは東京湾に注ぐ隅田川の河口近く。図書室には、大きなテーブルと椅子が並んでおり、文学作品から、科学本、辞書に少量のマンガ本が並んでいます。よくある普通の図書室と別段変わった様子はないようにみえます。

 ところが、少しだけ違うのは、ところどころに、「○○コーナー」という札があり、テーマに合った本が置かれているところです。図書室の扉を引くと、まず目に入ってくるのが、「環境問題コーナー」。そこには、ダイヤモンド社のシリーズ書籍、『たべものがたり』『みずものがたり』『いきものがたり』、そして、最新刊の『earth code 46億年のプロローグ』が置かれています。




環境問題コーナー
「考えてみよう! 環境問題」のコーナー。図書室の中で際立っています




コーナー詳細
透明のフックに本がかけられています



■環境問題コーナーの誕生

「このシリーズの本と出会ったのは偶然でした」

 山井先生は図書室に置く本のほとんどすべてに目を通し、子どもたちから本について質問を受けたら、答えられるよう備えています。そんなある日、山井先生は校長先生から、「この本を図書室に置いたらどうか」と渡され、『たべものがたり』を手に取りました。いつもの通り本の表紙を開け、ページを一つずつ繰るうちに、本のユニークさに気付いたといいます。

「『たべものがたり』は環境問題に関する本かもしれませんが、『環境を守ろう』といった言葉はひと言も見当たりません。そこが、面白いと思いました。それでいて、読後には環境への興味が増すつくりになっています。子どもによっては、この本を通して自身で大切にすべきものは何かを考えるのではないでしょうか」(山井先生)

 その頃、山井先生は図書室に環境問題に関する本を集めてコーナーをつくろうとしていました。よくよく調べてみると、『たべものがたり』のほかにも、シリーズ本が何冊か出ています。これらを並べて、「考えてみよう 環境問題コーナー」を設けようと、山井先生はさっそく、ほかのシリーズ本を集めました。とはいえ、単に、本を書棚に並べても、背表紙しか見えません。これだけでは子どもたちの興味を湧かせるには無理があります。




全体
図書室に入ると、一番目立つ場所にコーナーがあります




地球温暖化コーナー
「地球温暖化コーナー」もあります




■本の面白さを伝える図書室

 子どもたちの目を引くもの、手に取ってみたくなるようなものにしなければ、どんなコーナーをつくっても、子どもたちは素通りしてしまいます。そうなると、せっかくのコーナーは台無しです。そこで、山井先生は本の表紙が見えるようにディスプレイしました。透明なフックに本を載せるだけの簡単なものですが、図書室に入ると正面の一番目立つところにコーナーを設けました。

「ボードに透明のフックをつけて、本を載せただけですが、このようなコーナーをつくるだけで、手に取ってくれます。わかりやすく書かれていますし、マンガなどを入れて楽しく読めるようにしているところが子どもたちにとってよいようです」

 もともと、『たべものがたり』は、文化祭で環境問題を取り上げたときの下調べ資料にも使われていました。子どもたちにとって、このシリーズ本は親しみのあるものです。そこに、山井先生の工夫が混ざり、子どもたちに「環境問題コーナー」は、評判は上々のようです。

 このほかにも、地球温暖化コーナーを設けたり、子どもたちのリクエストにこたえて最新刊をこまめにそろえたり、子どもたち一人ひとりに合った本を紹介したりと、山井先生は子どもたちに本の面白さを伝えています。

 以前の晴海中学校は、年間の図書室の貸出利用件数は300件程度でしたが、いまでは3倍の約900件にまで伸びたといいます。いまの子どもたちはゲームやテレビに触れる機会は簡単に得られますが、本の面白さを知るには、きっかけが必要な場合もあります。子どもたちに本の良さを伝えたいという願いから、工夫を凝らす山井先生。そんな思いが込められた図書室で、本を手に取る子どもたち。毎年、一人、二人……と増え、大勢が本を大好きになっていきます。

 ダイヤモンド社のシリーズ本は、表紙もイラストなどで彩られ、子どもたちの興味を引くようなものばかりです。そのなか、図書室の環境問題コーナー置いてもらうことで、子どもたちの興味を促すことに貢献できました。今日も晴海中学校では、昼休みに図書室に集まった子どもたちが本に触れていることでしょう。

(取材・文 江口 陽子)