企業単独ではできないことを協力が解決する
~横浜スマートシティプロジェクト~

2010/06/30

 ここ数年、環境に関する活動が盛んになり、学校ではグリーンカーテンやビオトープ、堆肥づくりなどの活動を進めているところが多くあります。身近にできることに、取り組むことは環境に関する活動として大切なことです。ただし、現在では、一人ひとりの環境への意識が高まるに従い、取り組みは多様化し、活動の幅に広がりを見せてきました。

 その中、学校における取り組みが、学校内だけでなく、地域住民や市区町村と協力することで、多様な活動が可能になったように、企業も他社や各省庁、市区町村と協力することによって、低炭素社会の実現を今までとは別のアプローチで取り組むようになりました。いま、横浜市では、自動車や電機メーカーなどと協力して「横浜スマートシティプロジェクト」を立ち上げ、活動を進めています。

 CO2削減を目的とした活動には、一人でできるものから、先のプロジェクトのような大がかりなものまで多岐にわたります。もちろん、活動の規模が大きければいいというものではありません。ただ、「横浜スマートシティプロジェクト」に着目すると、これまでにない組織同士の組み合わせによって、今までできなかったことを可能にしていくことがわかります。さまざまな活動の中の一つとして、今回は、横浜市の取り組みを紹介します。

■4つの地域が選ばれる

 「横浜スマートシティプロジェクト」の立ち上がりが決定したのは2月。もともと、経産省の「次世代エネルギー・社会システム実証地域募集」に応募したのが始まりでした。いま、企業では、太陽光パネルや電気自動車など、CO2削減に貢献するための製品、システムが開発されています。ただし、それぞれの企業が独立して開発を進めているため、それぞれの繋がりはできていません。また、太陽光や風力などのCO2削減に効果があるといわれているエネルギーは天候などに影響されるため、不安定だという欠点を抱えているため、これらを制御するシステムの構築が必要だという考えがあります。

 今回の、「次世代エネルギー・社会システム実証地域」というのは、地域で、システムを構築して、エネルギーの有効活用や、電気自動車が走る姿が多くみられるような街をつくろうというものです。2月の募集に応募した横浜市。ほかにも、約20の地域の応募がありました。そのなか、横浜市、豊田市、京都府けいはんな学研都市、北九州市の4つの市が選ばれました。

 特徴的なのは、それぞれの市が独自で推進するのではなく、企業と協力して実行していくところです。自動車や家電、エネルギー関連のメーカーなどが協力し合ってプロジェクトに参加している点にあります。横浜市では、東芝、日産自動車、パナソニック、明電舎、そしてアクセンチュアの5社、そのほか多数の企業がこのプロジェクトに参加しています。今は計画段階で、全体の大まかなところを決めている段階です。どのような実験がいいのか検討しています。

■今までと違った生活のあり方

 このプロジェクトが成功すると私たちの生活はどのように変わるのでしょうか。たとえば、ある家庭で太陽光発電のパネルを屋根に取り付けます。いままでなら、電力会社から買っていましたが、自分の家でつくった電気を利用できるようになります。太陽光パネルなので、石油をつかった火力発電と比べて、CO2排出量を少なくすることとができます。自分の家でつくった電気の量が、使う量よりも多ければ、電気は余ります。こんどは、その余った電気を売ることで、収入になります。

 エコカーといわれる電気自動車も、人を乗せて運ぶというだけでなく、別の役割が出てきます。それは、蓄電池。電気自動車は、走る以外に、電気をためることもできます。ので、昼間余った電気を、電気自動車のなかにためておくことができます。昼間、電気がたくさん必要になったら、逆に、車庫に停めている車から家に電気を送ることができるようになります。そうすることで、電力会社から買ってくる電気の量を減らすことができます。これが省エネになり、環境への負荷を低減できるといわれています。

 家の中の電気の制御は、家電メーカーの技術が用いられ、電気自動車に関する蓄電は自動車会社の技術がつかわれます。電気を売ったり買ったりするときに、電気のやり取りをするのは、電機メーカーの技術が重宝するところです。また、余った電気を足りないところに送ること、どこに送るともっとも効率がいいかといったことも電機メーカーの技術が活かされます。

「結局、どんなに素晴らしい技術が開発されたとしても、最終的に利用する消費者が受け入れられるものでなくてはなりません。それには、企業単独の技術ではなく、これらが組み合わさることにポイントがあります」
 企業と横浜市が協力して生まれたシステムは、人々の生活のあり方を変えるようなものになる可能性があると説明するのは、横浜市の稲垣英明氏です。

 日本の環境技術は企業単独でみると、世界のトップクラスのものが多くあります。ただし、これまでは、企業が単発で技術を提供していることが多くありました。そこで、今回のように横浜市を中心として、さまざまな技術が組み合わさることで、新しい街、システムができあがります。将来的には、このシステムごと、外国に売れば、日本にとって、収益源ともなります。いまは端緒についたばかりですが、今後は、実現に向けて、一歩ずつ進んでいくことでしょう。

(取材・文 江口陽子)




稲垣英明氏
横浜市地球温暖化対策事業本部 地球温暖化対策課 担当課長 稲垣英明氏