地球上にある「キミ」の探し方 ー観察が見え方を変える

2010/07/27

 ヒトとその他の動物の違いはなんでしょうか。同じ地球上で暮らしている3000万種以上の生き物に対して、私たちはそれぞれ、まったく別の物と考えがちです。ヒトとハト、ヒトとライオン、ヒトとオラウータン。違いを見つけるのは難しいことではありません。でも、互いの違いを探しているうちに、生き物同士には違いよりも、むしろ共通点が多いことに気づくのではないでしょうか。

 「生き物」と「私」の共通点を見つけ出すことができた方、どんなところが似ていましたか。

 ダイヤモンド社では、応募企画「この地球上にキミを探せ!」の作品を募集しています。これは、4月に発売となった『earth code 46億年のプロローグ』に関連した企画で、地球上にいる「生き物」と「私」の共通点を探して、自由にレポートするものです。皆さまの気づいたことをレポートにまとめて送ってください。

 共通点なんて、そんなに簡単にみつからないよ、と思う方もいるでしょう。そんなときに有効なのは、とにかく生き物を観察することです。とはいえ、ただ動物を眺めていても、何も見つからないこともあります。実は、観察にはポイントがあって、共通点が目に留まるような観察の仕方が存在します。

■一つの動物だけを30分以上も観察

 東京都日野市にある多摩動物公園では、毎月第3土曜日に「観察デー」を設けています。専門家である解説員のサポートとともに動物を観察するものです。対象となる動物はアフリカゾウ、キリン、インドサイなど13種。毎月、これらから一つが選ばれます。今月の観察対象はチンパンジーでした。

 7月17日、朝10時30分、チンパンジー前には、人が集まってきました。ガイド役の草野解説員は参加者に観察シートを手渡します。シートの種類は3つ、子ども用の観察シートは○をつけるだけで、観察のポイントがつかめるようになっています。

 ところで、「キリンは何色ですか?」と問われたら、どう答えますか。多くの人は黄色、あるいは黄色に茶色のまだらと回答するのではないでしょうか。しかし、キリンの実物を目にすると、毛の色は黄色ではないことに気付きます。ここに、実物を見て、観察することの大切さがあります。




観察シートに観察結果を書き込みます
観察シートに観察結果を書き込みます




 参加者はそれぞれ、自分のペースで観察を進めていきます。
「チンパンジーには、たくさん観るところがありますよ。たとえば、同じお尻でも、観察ポイントはさまざま。チンパンジーに尻尾はあるかどうかという観察があります。それから、3歳以下の子どものお尻には白い毛がありますが、4歳くらいになると白い毛はなくなります。このように、年齢による違いを発見することも観察のポイントです」(草野解説員)

 子どもと大人の違い、時間帯による生活の違い、天気による違い。どこに目をつけたらいいのか、解説員のアドバイスによって、普段気付かない観察のポイントがわかるようになっています。

 親子で一緒に、観察シートを片手にチンパンジーの姿を追う姿があります。観察をしていると、チンパンジーの子どもと人間の子どもが互いの仕草を真似るなどして、遊ぶようなことも起こるといいます。チンパンジーとヒトという違いはあっても同じ子ども同士、言葉を超えた部分で互いの意思を通じ合わせるときもあるようです。




人工アリ塚。ジュースをなめるため、棒を差し込みます。道具を上手に使いこなします
人工アリ塚。ジュースをなめるため、棒を差し込みます。道具を上手に使いこなします




UFOキャッチャー。棒を使って下の穴におやつを落とすと、食べることができます
UFOキャッチャー。棒を使って下の穴におやつを落とすと、食べることができます




 11時になると、チンパンジーのおやつタイムになります。UFOキャッチャーという場所にリンゴやバナナ、キュウリ、ゼリーが投入されます。でも、UFOキャッチャーには透明の壁があるので、そのままおやつをとって食べることはできません。
 そこで、チンパンジーは棒を手に取り、壁にあいた隙間に差し込んで、おやつを穴に落としていきます。そうすることで、UFOキャッチャーの下部にある出口にたべものが出てくる仕組みになっています。
 おやつにありついたチンパンジーは、おいしそうにたべものを口にします。バナナは皮をむいて、ゼリーはフタを自分でむいて器用に食べます。




草野さんは、観察のヒントを教えてくれます
草野さんは、観察のヒントを教えてくれます




■生きているということを実感するには

「テレビ番組のように編集されたものを観ただけでは知ることができないことが、
生きている動物を直接観ると発見できることもあります」(草野解説員)

 観察を重ねていくうちに、チンパンジーと人間の共通点が見えてくるでしょう。チンパンジーの子どもはヒトと同じように、子ども同士でたくさん遊びます。オスの子どもが好きな遊びはレスリング。人間の男の子にも、レスリング好きがたくさんいるのと同じです。
 3歳のマックス君と5歳のボンボン君は、レスリングが楽しくて仕方ないようです。でも、力の強さでは年長のボンボンが圧倒的に有利で、本気で戦ったらマックスは大けがしてしまうほど力の差があります。でも、ボンボンはマックスを徹底的に痛めつけることはせず手加減します。
 それは、ボンボンにとってマックスは大切な遊び相手で、マックスがいなくなったら、遊び相手のいない退屈な毎日を過ごさなければならなくなるからです。
 動物の社会も人間の社会と同じように、自分一人だけでなく、他の生き物とともに成り立っています。そのなかで生きていくには、自分の欲望を抑えて、我慢しなければならない場面も出てくる。これは、チンパンジーも人間も同じことなのです。

 動物を観察することで、生き物が生きているということを実感できるのではないでしょうか。
 募集企画のレポート内容では、動物の内面、行動、仕草、外観どの切り口も対象です。なにより、大切なのは、自身で感じた共通点がレポートに映し出されていることであります。
 応募資格は18未満の子どもたちすべて。レポートの記入方法がわからないときは、下記のページをご参照ください。
▽募集の案内
http://mirai-tosyositu.jp/plan/earth/index.html

(取材・文 江口 陽子)




多摩動物公園 草野解説員
多摩動物公園 草野解説員