女子大学生が示す世界を変えるお金と時間の使い方
清泉女子大学地球市民学会

2010/11/18

 カフェの模擬店、アマチュアバンドのライブ、そして展示物が並ぶ教室。秋は学園祭で学校がにぎわう季節です。東京都品川区に清泉女子大学という学校があります。建学の精神にはキリスト教のヒューマニズムが宿る、少人数教育を実践している学校で、今回のレポートは清泉祭という女子大の学園祭が舞台です。

 屋台や手作り品の店を通り抜けると、今回の目当てである教室にたどり着きました。そこでは、「あなたは100円をどう使いますか」「60秒の間に世界で起こっていること」という展示があり、展示物制作するにあたり、『世界を変えるお金の使い方』『1秒の世界』(ダイヤモンド社刊)を参考にしたといいます。
 彼女たちが、この二冊の本に着目した理由は何か。そして、展示物を制作するうえで、どのように書籍を利用したのか。そもそも、なぜ、「お金と時間の使い方」をテーマにしたのか。女子大学生3人にお話をうかがいました。

 今回の展示を進めたのは地球市民学会というグループで、文学部地球市民学科の学生の中から有志が集まって生まれた会です。通常の活動は、学科パーティや会合などでの意見交換、世界の飢餓状況を体験する『ハンガー・バンケット』というイベント参加やボランティア活動などを展開しています。そのなかの一つが今回の清泉祭での展示で、1年生と2年生が中心になって制作にあたりました。

「私たちは100円があれば、ハンバーガーを食べて空腹を満たします。でも、同じ100円でも、もっと違う別の使い方があります。みなさんにいろんな100円の使い方があることを知ってもらい、考えてほしいと思いました」
 地球市民学会会長の湖西紋子(こにし・あやこ)さんは、「100円」に着目した理由を述べます。また、清泉祭での代表を務める柳本さんは、「60秒」という単位を採用した理由を次のように説明します。
「実は、今年は清泉女子大学の創立60周年にあたります。そこで、“60”という数字をもとに考えたい、伝えたいという思いがありました」



60秒の世界
60秒間に起こっていることを世界地図で表しています



100円
100円で何ができるか。対象となる場所の国旗を示し、わかりやすく表示しています。



本の展示
展示の最後にはコメントが。
「たとえば小さい100円でもわずかな1分でも、費やすならみんながhappyになるほうがいい!」



■インターネットにはない情報が欲しかった

 制作を開始したのは5月。テーマ決め、何を展示するかなど、話し合いながら決めていきました。
 そしてメンバーは手分けして、展示物の元となるネタを集めました。ある人は、60秒間に地球で起こっていることを、またある人は100円でできることをインターネットにより探しました。しかし、インターネット上で行きつく情報はどれもありきたりのものばかりで、目新しいものがありませんでした。
「私たちの間であまり知られていない情報が欲しかった」(湖西さん)
 そこで、メンバーはウエブサイトだけでなく、もっと別のところに情報があるのではないかと探し始めました。そして、たどりついたのが、『世界を変えるお金の使い方』『1秒の世界』、二冊の書籍です。

「本のなかにはインターネットには載っていない、私たちが知らないことがたくさん書いてありました。そこで、私たちは制作物を作るにあたって、もととなる資料としてこの本を使いたいと思ったのです」(湖西さん)

 夏休みになると、制作活動は本格化していきます。休みであるにも関わらず、メンバーは時間を都合しては登校し、少しずつ完成させていきました。
 彼女たちはなぜ、このような活動に興味を抱き、取り組むようになったのでしょう。地球市民学科の授業ではボランティア活動ともとより、発展途上国の現地の人々と生活を共にし、異文化の理解や日本文化を紹介する体験があります。学科を受験する人のなかには、将来、発展途上国の人たちの支援をしたいと願う人が少なくありません。

 制作を担当した鈴木 南美(すずき・みなみ)さんは、母親の出身地であるフィリピンを訪れることがよくあります。実家から少し離れた地域には、住む家も食べるものもなく、飢えに苦しみながら暮らしている人たちがいます。鈴木さんは雨をシャワーの代わりにしている子どもたちの姿を目にして、みんなが幸せになれる道を探るようになりました。
 湖西さんもフィリピンに行き、衝撃を受けた一人です。現地には、学校にも行けず子どものうちから働かなければならない子どもの姿がありました。
「学校に行けないような子どもが必ずしも不幸だということではなく、一人ひとりにはそれぞれの生き方があると私は思います。ただ、実際に、親に恵まれなかった子どもたちの姿を目にすると、なんとか手助けしたいと思うようになりました」(湖西さん)

「100円といえば、幼少の頃にお小づかいでもらう、わずかな金額です。それでも、たとえばミヤンマーの子どもをポリオから救うことができます。このようなことをみんなに伝えて、お金の使い方を考えてほしかった」(柳本さん)

■お金の使い方を考える意味

 私たちは毎日の暮らしの中でお金を使うことで、お金は循環していきます。身近なことでいえば、私たちの多くは毎日働き、収入を得て、お金を日々の糧や楽しみのために費やし、その消費が企業の売上につながります。また、視線を世界に移すなら、そこでは投資家がお金を投下し、生み出された利益がさらに大きな富をもたらしています。お金は投資家や企業、顧客と従業員など、世界中を巡っています。
 お金が流れることで、人々の生活は豊かになりますが、その一方で、この循環の中でお金が届かず、貧困に苦しむ人たちもいるという事実があります。幸い、私たち日本社会は豊かで、物があふれているなかで暮らしている人が多数を占めます。
 そのなか、豊かさを感じられる私たちが、自身が恵まれていることに感謝し、お金に恵まれていないところにお金を循環させる。実はこのような方法が、お金の使い方として大切なのではないでしょうか。
 では、どこにお金を使えば何ができるか。それを表したのが、『世界を変えるお金の使い方』なのです。貧困撲滅や格差是正が叫ばれるなか、社会の仕組みを変えていくことも重要ですが、まずはお金に対して使い方を考えることが前提として必要なのではないか。清泉女子大学の活動は、多くの人にお金の使い方に対して考えることの大切さを訴えていました。
(取材・文 江口 陽子)



展示班
向かって左から、鈴木南美さん、柳本恵里さん、湖西紋子さん、浅深史麗さん



地民会
地球市民学会のみなさまと清泉祭に応援に来てくださった方たち