未来図書室.jpからの最新刊 『みずものがたり』制作秘話を寄贈に先駆けてご紹介

2008/02/29

覚えるのではなくて想像して欲しい
~『みずものがたり』の編集ディレクター こだわりを語る

『みずものがたり』はタイトル通り、水をテーマにした本です。水の性質にはたくさんの不思議があります。この本は、水は循環しながら冒険のような旅をしていること、そして今、私たちが直面している地球温暖化という問題、水と生命との関係など、さまざまな切り口で水を語っています。『みずものがたり』は全国の小・中・高等学校に寄贈し、子どもたちが手に取ることを前提にして創りました。もちろん、授業の教材としても使えます。
「水は環境問題と密接なかかわりを持っています。子どもたちが身近な水を通して、今までとは違った角度で環境について考えるきっかけになれば、という願いが本書には込められています。そのために、まずは子ども達に好奇心を持ってもらうことを意識して創りました」

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『みずものがたり』 山本 良一(企画監修)/上田壮一(編著)/ダイヤモンド社(発行)

 このように語るのはThink the Earthプロジェクトの上田 壮一さん。本書の企画と編集を手がけました。上田さんが語るように、この本には子ども達が好奇心を持てるような工夫が盛り込まれています。特徴的なのは、文字だけでなく、写真やイラスト、マンガなどを使っているところ。
「絵が好きな子はイラストのページをたくさん見るでしょう。例えば、水の循環は楽しいイラストで表現しました」
 本書ではキャラクター化された水が雲から雨になり、地中に潜って、やがて人体に入る場面が描かれています。「ここはどこ?」「地底の洞窟さ」などのセリフが入り、楽しみながら読み進めていけるようになっています。子どもによっては、「この水は次にどこに行くのだろう?」という思いが止まらず、本を閉じた後も水の行き先に思いをめぐらせてしまうかもしれません。
 もう一つの特徴は環境問題に密接にかかわっていながらも、答えを知ってもらうことが最大の目的ではないと上田さんは語ります。
「CO2を削減しましょう。水を大切に使いましょう。その様な答えがあっても面白くないでしょう。まずは、子どもに好奇心を持ってもらうことが大切。読み終わった後で、インターネットで調べる、詳しい大人に話を聞く、といったことに発展すると嬉しいですね。今は環境問題に対して何をしたら良いかわからなくてもいいのです。関心があれば、いずれ何かが見えてくるはず。まずは想像する力を鍛えて欲しいのです」(上田さん)

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上田 壮一さん 『みずものがたり』の企画、編集を担当

■写真一枚を選ぶのにも時間をかけるスタッフ

 水に関する本はいつか作りたいと思っていたという上田さん。アイデアが次々と湧いて出てきたといいます。本の内容を決める上では、たくさんあるアイデアを削るのに苦労したようです。
 企画監修者である山本良一先生(東京大学生産技術研究所教授)をはじめ、制作にかかわった人たちからもたくさんの意見が寄せられました。
「とかく環境問題というと、未来に対して暗いイメージを抱きがちです。でも、節水トイレの開発や雨水利用、マイボトルなど、企業はまじめに環境問題に取組んでいます。その姿をぜひ子ども達に伝えて欲しいと山本先生から要望がありました。そこで、企業や自治体、NGOの取り組みを紹介するページを設けました」

 『みずものがたり』はスタッフ一人ひとりが丁寧に、細部にまでこだわりを持って創り上げた本です。食べ物でいえば、レストランのシェフが何日もコトコトと煮込んだスープのようです。冷凍物を解凍したようなものでないことは、冒頭の航空写真にも現れています。
「スペースシャトルの写真だと、視点が遠すぎてあまり水として実感がわきません。だからといって、普通の水の写真ですと、どこかで見たような印象を受けてしまいます。そこで、高い位置からの航空写真ならば、ちょうど良い距離感があると思ったのです。とはいえ、ただの航空写真でもダメです。そこで、もともと大好きだったフランスの世界的航空写真家ヤン・アルテュス=ベルトランの作品から選ぶことになりました」
ここに載せた写真はたったの4枚。でも、選ぶまでに上田さんは5000枚以上もの写真を見ているのです。たくさんの中のほんの上澄み。それがこの本の中に凝縮されています。

 中ほどには、砂漠の中に位置するアフガニスタンの暮らしをイラストで紹介しているページがあります。手に入る水が日本と比べて少ないアフガニスタン。どうやって生活をしているのか解説しています。
「ページのレイアウトができると執筆者に内容を確認していただくのですが、執筆者の児島さんはアフガニスタン在住です。街に出ないとインターネットにつながらないのです。もちろん、ブロードバンドなんてありません。メールのやり取りは大変だっただろうと思います」
 このコーナーのアフガニスタンのイラストは現地で暮らす人たちを実際に撮影したものを元に描かれています。ヤカンや桶の大きさ、色など、実物に合わせてあるのです。ここにも制作者の本物にこだわる気持ちがみてとれます。
 子どもに上質なものを手にとって欲しい。ぜいたくに作られた『みずものがたり』にはスタッフの思いが凝縮されています。水にはたくさんの不思議が詰まっています。子どもと一緒に水になったつもりで、本に現れる遠い国へ想像の旅に出るのも楽しいかもしれませんね。

(構成:江口 陽子)