全員参加の環境教育 〜杉並区立永福小学校〜

2008/01/28

学校の中に豊かな自然環境を作ることは、子どもたちがたくさんのことを学ぶ機会となります。ビオトープ作り、田植え、壁面緑化をはじめ、環境教育に取組んでいる学校は多いことでしょう。しかし、取組みを始めるのは良いが教員や児童が興味を持ち続けられるのか、運営面での維持管理は大丈夫か、といったことを考えるとしり込みしてしまうことも時にはあります。
 東京都杉並区立永福小学校には「自然再生プロジェクト」と呼ばれるものがあります。今年度で4年目。ビオトープ、生き物の泉(池)、屋上の芝生、風力発電・太陽光発電など、校内を歩くと盛んに活動を展開していることがわかります。しかも、校長をはじめとする教師陣も積極的に参加。子どもたちはもとより先生方が楽しんでいる姿が印象的です。みんなを巻き込んで、楽しみながら環境学習ができるようにすることはやり方次第で可能です。永福小学校の例を紹介しましょう。

■感動があるから集まる
「生まれた! ミミズの赤ちゃんが出てきた〜!」
 子どもたちはミミズの卵から出て来た小さな命を目の前に興奮気味に声を上げています。その日、授業ではミミズの卵を観察しながら、生命の誕生について学習していました。
「孵化したのは偶然です。予想外の出来事に子どもたちはみんな感動。大騒ぎになりました」
 このように語るのは、永福小学校副校長の田中 孝宏教諭。
「命の循環を子どもたちに伝えたかった」
 このような思いから、2007年度、永福小ではミミズコンポストを設置してミミズを使った堆肥作りに挑戦しました。私たち生物は命の循環の中に生きています。給食室から生ごみである野菜の切りくずが出る → ミミズコンポストの中に入れる → ミミズは野菜のクズを食べる → 肥えた土を作る → その土を使って出来た作物を食べて人間は生きる → そして、食べた作物の切りくずが再び土に戻される。
 この循環にあるミミズの役割を知ることで、子どもたちに命の環を体験して欲しいという願いがあったのです。最初はうごめくミミズの姿に気持ち悪がっていた子どももミミズの不思議に触れるたび、「ミミズってすごいなぁ」というように変わったといいます。

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ミミズの卵。こんなに小さい

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ミミズコンポスト。野菜の切りくずはミミズの大好物

■遊び心にみんなわくわく
 環境学習といっても、つまらなかったら子どもは興味を示しません。永福小の校内には至るところで自然を利用したポイントがあります。そこには遊園地のアトラクションのように仕掛けがあって、発見するたびにわくわくします。
 プールの裏手にあるビオトープには数が減ったとされる野生のクロメダカが生息している池があります。何気なく生えている草花が実は希少な種だということに気づくことも驚きです。さらに、実はこの池、人間の足あとの形をしているのです。池の上側には丸が5つ。指のあとをあらわしていることに気がついたときの喜びは大きなものがあります。樹木の上のほうに目をやると、子どもたちが作った鳥の巣箱が見えます。実際に鳥たちがやってきて使っている姿を観察できるようになっています。そのほか、蝶が集まりやすい草木が生えているコーナー、水田の水を温める枠など、一つひとつに驚きがあります。


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子供たちが作った巣箱。近隣の野鳥の休憩所に

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屋上に設置された風力発電。イルミネーションの電源に利用されている

 小学校の池というと、藻が生えて汚いイメージを抱く人もいるのではないでしょうか。でも、「生き物の泉」と呼ばれる校舎横の池の水は底まで澄んでいます。しかも、水のろ過装置は使っていません。その秘密は大小2つの丸みを帯びた池の小さいほうに隠されていました。ここには、水中に根が生えた植物が育っています。これが人間の肺のような役割を果たし、水をろ過してくれるのです。池の周りは保護者が作った板張りになっていて、子どもたちは池の中の生き物を観察しやすくなっています。以前、子どもたちは汚いからと言って避けていた池なのに、今では子どもたちの絶好の観察場になっています。
「電気を使ってモーターを動かすろ過装置がなくても水はきれいになることを伝えたいのです」
 自分達の今のライフスタイルは、実はエコに合わない方法をとっていることを小さなうちから理解しておけば、自分達の生活を変えていこうという気持ちになります。
「理論などの難しいことはもっと大きくなってから勉強すればいい。身近な自然の中には気づかないものがいっぱいあります。ミミズ一匹だって、その不思議を調べれば、いろんなことがわかってきます」
まずは体験することが大事だと田中副校長は語ります。
 
 仕掛けに気づいた人がその面白さに引き込まれ、仲間になっていく。ここに校内で取り組みの環が広がった理由があるのでしょう。
 ここで忘れてならないのは、これらの仕掛けを発案した北坊 伸之教諭の存在。
「運営していくには、手を入れなければならないことがたくさんあります」
北坊教諭は皆に自分の活動を誇示するわけでもなくコツコツと働きます。
 説明するときの北坊教諭の表情からは、少年のようにわくわくしながら仕掛けを仕込んだことがわかります。一人のわくわくが子どもたちや他の先生たちに伝わっていく。子どもたちのわくわくが嬉しくって先生たちは、また仕掛けを作っていく。環境教育にもミミズコンポストと同じように循環があるのですね。

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右から末永校長、北坊教諭、田中副校長


(取材・文 江口 陽子)