手づくり味噌で日本の食文化を体験する
〜東京都荒川区立ひぐらし小学校の食育〜

2008/05/27

 

 ここはひぐらし小学校の家庭科室。これから始まる授業では、3~4人のグループに分かれて味噌を作ります。テーブルの上に置かれた大豆は2kg。給食室のスタッフが授業のために朝から蒸しました。
「麹(こうじ)をボウルにあけて、手でバラバラにしてください」
 家庭科の加藤加代子先生は材料や作り方の説明をします。話が終わると、子どもはそれぞれ大豆をつぶす人と麹を小さくする人とに分かれます。
「くさいっ」
 麹の匂いを嗅ぐのは初めての経験。独特だけど、そんなにいやな匂いでもないね。子どもはそれぞれ感想を口にしながら、固まりになっていた麹を小さくしていきます。


材料は大豆、こうじ、種味噌、塩、湯冷まし


授業が始まる前に大豆の重さを計る加藤先生

 ひぐらし小学校の食育で大切にしているもののひとつに、日本の食文化を教えるということがあります。給食をごま、豆、昆布中心の「ご・ず・こん」にしているのもそのためです。 「ひぐらし小の食育では、発酵に関する学習も大切にしています。生きている微生物が私達の身体にいかに有効であるか、授業で学びます。漬物、味噌、ヨーグルトなど、腸内に微生物を住まわせることが生活習慣病を予防する。この点も指導しています」
 と話すのは前回もご登場いただいた宮島 則子先生。荒川区立ひぐらし小学校で主査 栄養士として子供たちに「食」の指導に当たっています。宮島先生の考える食育とは、「心も育てる食育」。言い換えればこれは「絆を深める」ことを意味するのだといいます。家族や社会、自然環境、食文化などそれぞれとの絆を確かなものにしていくところを食育の目的のひとつに置いています。

食べることは命をいただくこと。なかでも、発酵食品は生きたものを体内に取り入れるという点で肉や魚など他のものとは違う。このことを子ども達に伝えている、と宮島先生は言います。
発酵食品である味噌と醤油についても学習項目としてしっかりと学びます。あわせて、大豆栽培も実施。採れた大豆から「ずんだもち」や黄な粉、豆腐を作っています。
ひぐらし小では味噌づくりの実習が家庭科の中に組み込まれています。
「手づくりの美味しさを知って欲しい。手作りとそうでない物の違いが味覚として子どもの記憶に残るといいですね。そうすれば、物を買うにも安いという理由だけで安易に選ばなくなると思います。本物を見極める力がつくように願っています」
味噌作りの実習は宮島先生も指導に当たります。

■実習の始まり!
「大豆はビニール袋の上からつぶします。たたくのではなくてつぶすようにしましょう」
加藤先生が説明します。めん棒をあてて、つぶしにかかります。
「宮島先生っ!」
ひとりの子どもが困った顔をして宮島先生を呼びます。なんと、勢いあまってビニール袋が破れてしまったのです。机の上には、大豆が少しこぼれています。
「大丈夫ですよ」
宮島先生は破れたビニールの先を持って、固く結びました。


大豆をつぶし方のお手本を見せる加藤先生


手つきも良くなってきました。その調子


種味噌を入れると香りがたちます

 授業は2時間通し。後半に入ると、大豆がだいぶつぶれてきました。次は、大豆をボウルに移して、塩と種味噌を入れます。種味噌というのは、去年作った味噌のことです。ボウルに入れると、あたりに味噌の匂いが漂います。良く混ぜたら、今度はおにぎりをにぎる要領で、ボールの形に固めます。
 宮島先生がかめの中に、丸くなった味噌を詰めます。机の上には、ボールになり損ねた味噌のかけらが乗っています。つまんで食べてみると、少しだけしょっぱい。味噌の風味はあるけれど、大豆の煮物のような、それでいてどこか味噌のような味がしました。上にペットボトルの重石を乗せて出来上がり。後片付けをしっかりしたら、授業は終わりです。
 でも、味噌はすぐには食べられません。半年寝かせて、やっと味噌が出来上がります。一部は、大豆の蒸しを手伝ってくれた給食室に配る予定。給食の味噌汁に使います。
「半年後じゃないと、食べられないのだよ」
 授業で習って知っていたとはいえ、ちょっとだけがっかり。半年後、子どもは自分で作った味噌を家に持ち帰ります。半年後、家族と味わう味噌を楽しみに教室を後にしました。


おにぎりをむすぶ要領で丸くします


ボールの形に丸めたらかめに入れます


かめに味噌を詰める宮島先生


ボール状のものを平らにします

< img src="/news/share/images/omosi.jpg" /> 《キャプ》 重石を乗せたら半年待つ

■『日本FOOD紀』によると

 2008年4月30日より、ダイヤモンド社は全国の小・中学校に『日本FOOD紀』(服部幸應:監修 古田ゆかり:著)を寄贈しました。この本は子どもたちに、「食」の話題を楽しみながら、「食の大切さ」、「食を通したコミュニケーション」の心を育んでもらうために作りました。家族のコミュニケーション、食を通して心が成長すること、そして日本の食文化を大切にしています。ひぐらし小学校の食育の考え方とも、多くの共通点があります。
『日本FOOD紀』にも発酵食品が登場します。本によると、大和時代にはすでに発酵食品は存在していたようです。この頃の発酵食品はお酒。麹が伝わったのは、まだ先のことのようです。麹の技術が発達して、味噌、醤油をつくるほうへ繋がっていったといいます。
(取材・文 江口 陽子)
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『日本FOOD紀』が書店にない場合は、ブックサービス(株)までご連絡ください(TEL:0120-29-9625)。
※ダイヤモンド社ホームページからもご購入いただけます。
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=4-478-00192-9