農業には食育を成功させる要素がいっぱい
三鷹市食育モデル校~連雀学園三鷹市立南浦小学校~

2008/07/29

 食育基本法が施行され、食育に取り組む学校が増えました。食事は毎日、誰でもが行うこと。人間が生きていくために、欠かせない行為です。その一方で、学校があえて食育に取り組むことに意味はあるのか? という疑問の声を耳にすることもあります。

 連雀学園三鷹市立南浦小学校(以下、南浦小)は食育に取り組んでよかったという声が聞かれる学校です。南浦小が三鷹市の食育教育モデル校になったのは2006年。以前から教育プログラムのひとつとして取り組んでいた食育が本格的に始動しました。朝食を食べる集会、たくわん作りプロジェクト、三鷹でとれた野菜で作るカレーの日など、活動は多岐に渡ります。中でも、田んぼ、畑などの農業を一つの軸として注力しています。学校は東京都三鷹市の中心部官公庁街に位置し、市内幹線道路沿いに建っています。決して、南浦小は農業に適した立地にはありません。しかし、南浦小の活動を目にすると、学校で食育を実施する意味を強く感じさせられます。

 活動の一つに「コメコメ大作戦!」というものがあります。これは、名前の通り、米作りの活動です。南浦小のコメコメ大作戦! が始まったのは去年、2007年でした。
「南浦小の特徴は地域と学校、保護者が一体となって進めている点にあります」
 校長の松原 邦宜先生が語るように、南浦小の食育プログラムには三鷹市で農業を営んでいる人たちが参加しているところに成功のカギがあります。JA東京むさし三鷹地区青壮年部。農業のプロが食育プログラムの企画段階から参加し、活動をしています。従って、米作りも本格的です。
 それまで、プールの横にある花壇は荒れた状態でした。何とか、良い形で利用したい。みんなの願いから、コメコメ大作戦はこの花壇を田んぼに替えて利用することにしました。田んぼにするには、花壇の土は適しません。そこで、取った作戦第一は土の全部入れ替え。田んぼを作るまでの作業は決してラクなものではありません。しかし、子どもたちは楽しむことに対する天才。泥だらけになって、土を足で踏み、ならして田んぼを作り上げました。コメコメ大作戦は苗作りから、田植え、イネの生育を通して、刈り入れまで進んで行きます。

コメコメ大作戦の看板は手づくり
コメコメ大作戦の看板は手づくり

プルーの横の花壇が水田に
プルーの横の花壇が水田に

連雀学園三鷹市立南浦小学校 校長 松原 邦宜先生
連雀学園三鷹市立南浦小学校 校長 松原 邦宜先生

「教師は農業の専門的な知識はそんなにありません。JAの方々には本当に助けていただいております」(松原校長)
 去年の夏、子どもからイネの様子がおかしいと報告がありました。JAの人が調査した結果、イネが病気になっていることがわかりました。
「すぐに消毒薬を撒き、対処したので大事には至りませんでした。私たち教師だけでは、病気だと判断するのに時間がかかってしまったでしょう。早期に対応できたので、イネが枯れずにすんだのです」
 地域の人と交わることが大事なことだと松原校長は言います。教員も保護者も、地域の人も皆、一生懸命子どもを育てています。子どものために団結することがより子どものためになると松原校長は言います。食育とは皆の力が融合して取り組むのに最も適しているのです。

水が減ると子どもが教えます
水が減ると子どもが教えます

「イネの花を発見したのも子どもでした。農業は大事だと思います。子どもにとって、土と触れ合うことは生きる過程で欠かせないことです。私たちが子どもの頃は、毎日友達と外でどろんこになり、遊んでいました。その中で成長していったのです。でも、今は昔のような環境は作りにくくなっているのです。家の中での活動や独りだけの活動が増えています」
 松原校長は、土に触れなければ学べないことはたくさんある、と言います。
「最初、子どもの目には土にみみずや虫がいることですら、ものめずらしく映るでしょう。田んぼのドロのぬるぬる感を味わうことが大事なのです。自分が育てたコメや野菜を食したり、家に持って帰ったりすることは貴重な経験となります。頭ではなく、身体で感じると、できた食物に対する愛情が違ってくるといいます。これまで南浦小には体験する場がなかったのです」
 食育をすすめる意味は、さまざまなことがあります。その一つには、感謝をする気持ちを育てること。とはいえ、子どもに感謝を口で説明しても通じません。土に触れ、自分たちで作物を作る。楽しいことも大変なこともたくさん経験することで、自然がいかに私たちに恵みを与えてくれるのか、身体で感じることができます。経験から感謝の気持ちが自然と生まれるのです。

 学校裏の畑ではトマト、なすなどの栽培も
学校裏の畑ではトマト、なすなどの栽培も

「南浦小学校が食育モデル校になって、今年で3年目。何より難しいことは、これまでの取り組みを定着させていくことです。新しいアイデアを入れながら、今後も取り組んでいきたいですね」(松原校長)

(取材・文 江口陽子)