英国の環境教育例~Oxted Schoolの場合~
「なぜ環境について考えなければならないのか?」

2008/08/25

ロンドン南部の郊外にある公立のセカンダリースクール(11歳から18歳の中高教育)、オクステッド・スクールでは社会科や理科などの各教科に関係した環境教育を行っている。

今回取材したのは7年生(11~12歳)から9年生(13~14歳)までの3つの学年で、地理の授業の中で、学年ごとに段階を追った生徒参加型の授業としての特徴が見られた。指導教員地理担当のフィリップ・エィヴリー氏は言う。

「生徒に必要なのは知識だけではなく、考え方です。なぜ環境について考えなければならないのか、本当に直面するべき問題なのか、生徒たちによって意識は様々です。生徒たちの自由な発想から、彼らなりに将来何が必要であるかということを判断できる力を育くむ目的で指導しています」

生徒たちは小学校6年次までに、ある程度の環境教育を生活レベルで学んで来ている。その内容は日本の「生活」科目とほぼ同様である。そして、セカンダリスクールに進学した時点から地理、生物、政治経済など各教科と関連した環境教育を受けている。

今回取材した地理の授業を例に取れば、7年次では、海岸侵食のシュミレーションを導入部分に、生徒それぞれの理論で展開する海岸線の将来像を図に描かせていた。そして、本来の海岸線とはどのように異なり、なぜ現在のようになってしまったのかということを生徒間の議論で進めて行く。教師の役割は生徒のイメージと実際との相違を埋め、事実の的確な認識を生徒に持たせることにある。さらに、海岸侵食対策を行わないと将来どうなるかということを地理、生物、経済などの側面から生徒同士に語らせ、サステナビリティの考え方に導くことで授業を締めくくっている。

8年次での授業はその延長戦上にあり、地理という科目と環境問題との関連性を学ぶ。環境問題が地理学に委ねられる部分はその地域性である。環境問題がグロバールレベルだけでなく、それぞれの地域単位でも考えるべきでことであることを生徒と話し合う形式を取っていた。その際に教材となっていたのは新聞報道で、世界各地で起きていることが少なからず環境問題に関わり、その事実に対して5W1Hの観点からどんなことを受信し、将来を如何に考えるべきるか、という問いかけをして具体例を挙げていた。授業の終わりには、「災害や戦争は不経済で環境にも悪い」という生徒の声が聞かれた。

9年次での授業では、7,8年次で培ってきた知識と見識を元に、生徒が独自に調査し、討論することに主眼が置かれる。この日は、生徒間討論が行われた。一クラスの24名が、英国、セーシェル島、オクステッドの学生、中国、サハラ、そして石油会社の6つのグループに分かれ、それぞれの代表者として、この日のテーマ「CO2削減と海面上昇」に関するディスカッションを展開した。この日のために生徒たちは一ヶ月間掛けて調査し、それぞれの国や組織の立場を自分たちに置き換えて意見を構成した。まず、各国の代表がそれぞれの立場と今後何が出来るかについて語る機会を与えられる。以下、特に目立った意見を抜粋しよう。

中国代表「うちはまだ経済的に発展途上の段階だし、国土は無限大に広いので、CO2削減についての現実感はない。我々のCO2排出量は全世界の中でも数パーセントに過ぎない。我々が問われる以前に、長期間に渡って世界最大のエネルギー放出国アメリカなどの先進国から制限されるべきだ。環境問題が地域レベルで対策に当たるべきと言うのなら、当面のことは放っておいてもらいたい。」

オクステッドの学生代表「石油輸出で豊かになって、エネルギーを最も多く放出する割には、サハラからは何の対策も見えて来ない。今すでに具体的なことをしなければならないのに、皆が責任を被せ合ってどうすると言うのか?我々は将来の子供たちのために地球を維持するしようと今出来うる限りのエコライフを展開している。そのひとつひとつの活動が英国民全体の数だけの削減になると考えれば、我々の行う活動にも意味がある。無為無策で、人類や地球の滅亡を速めるのは愚かしいことだ。それぞれの国がそれぞれの立場で出来ることをもっと提案して実行するべきだ」

取材後、フィリップ・エィヴェリー先生は締めくくる。「環境教育について明確なシラバスが整っているわけではありません。しかし、私たち地理教師は地理学の立場から環境問題を説明することが可能です。海岸侵食を例に取ると、自然の原理や原則から外れた場合は、自然現象とは異なる何か別の力が加わったかもしれないという認識が可能なのです。私たち教師は、既存の学問の範囲で組み合わされた各データを元に、子供たちを指導していくことは出来ますが、学習内容をさらに広げて新しい解釈を見出して行くのは、将来を託された子供たちの役割であると考えています」

(文と写真)マック木下
日英関係史、英国の産業、環境などの社会問題を中心とした記事を主流に執筆す るフリーライター