不法投棄と戦う
~木更津市立鎌足中学校~

2008/09/26

 クリーン作戦など、ごみを拾う活動を実施している学校は少なくありません。千葉県木更津市の鎌足中学校のクリーン作戦は2003年に始まり、今年で6年目になります。単年で終わらせず長く続かせること、そして、地域と行政をも巻き込んだ活動であるところに特徴があります。鎌足中学校の活動にはクリーン作戦を成功させるためのポイントが結集されています。

 千葉県木更津市の鎌足地区は緑があふれ、豊かな自然に恵まれた地域です。住民にとって自然は郷土自慢の種。そして、誇りでもありました。しかし、この地域には、一歩裏道に入ったところにおよそ4kmに渡る「不法投棄街道」と呼ばれる道が存在していました。2003年当時、道なりにごみが並ぶように捨てられていました。人通りが少ないのをいいことに、他の市や区からこの街道にごみを捨てに来る人がたくさんいたのです。一般の燃えるごみだけではありません。洗濯機や乾燥機などの家庭電化製品から自動販売機や酒瓶、中には便器が捨てられていることもあります。

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道には大小様々なごみが捨てられている

 木更津市立鎌足中学校では総合的な学習の時間に、「地域のためにできること」をテーマに活動を進めています。その中のひとつが不法投棄街道を片付けるボランティア。スタートしたときはわずか15名ほどでした。鎌足中学校の地道な活動に対し、少しずつ地域住民や市役所などの理解が深まり、毎年協力者が増えていきました。昨年(2007年)では、不法投棄現場を片付けるボランティアの参加者は50名を超え、多人数の活動となりました。

「不法投棄街道の存在は子どもたちも知っていました。緑が自慢のはずの自分たちの郷土が心無い人たちに汚されている。これはとても悲しいことです」
 このように語るのは、鎌足中学校の藤嵜(ふじさき)保 教諭です。子どもたちにも何とかしたい、という気持ちは強くあったといいます。1年目はビデオを撮り、全校生徒に不法投棄街道が存在することを示しました。でも、これだけではごみは減りません。

 そこで2年目。生徒たちは市役所を訪ねました。話し合いをした結果、市のほうでも不法街道は問題だと認識していることを知りました。
 何とかならないものか。
「ならば、まずは自分たちがボランティアで片づけをしよう」
 生徒たちは、自ら片付けることを決心しました。しかし、学校のメンバーは15人。これでは人数が足りません。そこで、全校生徒に協力をお願いしました。片付ける当日は部活動を休みにして、たくさんの生徒が協力してくれました。もちろん、片付けには市役所の職員も参加。学校と行政が協力して、不法投棄街道をきれいにする体制が整いました。また、参加者には保護者や地域住民も加わり、毎年人数が増えていきました。

kanegomi88.jpg片付けた可燃ごみの山。これはほんの一部

sodaigomi.jpg片付けた粗大ごみの山。こちらも一部に過ぎない

kanban222.jpg看板を立てました

■なぜ、片付けてもキレイにならないのか

 しかし、ごみを捨てる人は絶えません。せっかくみんなでキレイにしたところに、次々と新しいごみが捨てられていきます。そこで、3年目には市の協力で監視カメラやロープを設置。ごみが捨てにくくなりました。4年目、5年目と徐々にきれいになっていきました。

「今年はPTAも地域に呼びかけ、人を募ってくれるそうです。去年よりも参加人数が増えそうです」
 生徒と教師だけでなく、保護者、地域住民、行政と鎌足地区の人たちの協力があるから、ここまでやって来られたのだ、と鎌足中学校 内藤健一校長は語ります。

 もちろん、活動は自由参加。学校が生徒たちに強制することはありません。
「子どもたちはたくさんのことを学んだと思います。『汚い』と市に文句を言うだけでは解決にならない。市や地域の方々と協力し合いながら進めていくのが良いのだ、と感じてくれたのではないかと思っています。大人になって、何か問題に当たったとき、今回の経験が役に立ったらうれしいですね」(藤嵜教諭)
 怒っているだけではきれいにならない。そのことに生徒自身が気づいたことが生徒の自主性を高めるのに役立っているのかも知れません。

「活動の様子をビデオに撮るとき、ある生徒がボランティアの感想として『楽しい』と答えました。作業は決してラクなものではありません。ごみの片付けですから、不快な臭いがすることもあります」(藤嵜教諭)
 それでも、子どもたちは楽しそうにごみを運びます。楽しんで活動していることが6年もの長い間続いた理由のひとつでもあるでしょう。

kaosyasin2.jpg左:藤嵜(ふじさき)保 教諭 右:内藤健一校長

 子どもたちの自主性の源はもうひとつあります。そもそも、鎌足中学校はたくさんの人のボランティアによって支えられている学校です。全校生徒は53人と少なく、教師の数も多くありません。学校では花壇の植え替えや図書の読み聞かせ、学校行事の来賓対応などをボランティアの協力を得ています。学校のスタッフだけでは手が足りないのです。
「中学生というのは、半分大人のような部分もあります。生徒たちには自分たちが地域の人にしてもらうばかりでいいのか、という思いがあります。受身だけでなく、今度は自分たちが地域のために何かしたい。その思いが不法投棄街道をきれいにしたいという原動力となっている部分もあります」(藤嵜教諭)

 子どもたちの成長に活動が貢献していることは確かのようです。
「私は去年、鎌足中学校に就任して、初めて片付けに参加しました。生徒たちを見ていると、郷土が大切だという気持ち、自分のふるさとをきれいにしたいという気持ちが育っているように思います」
 派手な活動にしなくてもいい。これからも地道に進めていきたい、と内藤校長は語ります。

(取材・文 江口 陽子)