食に関する指導はみんなで進めていくもの
~葛飾区立堀切小学校の食育~

2008/10/26

 映画『男はつらいよ』や漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で知られる東京、葛飾区。今回、紹介する葛飾区立堀切小学校は葛飾区のもう一つの名所、江戸期の菖蒲文化を伝える堀切菖蒲園の近くにあります。駅前には身の丈ほどの大きな七福神が並び、下町の風情が漂います。都会ではあるけれど、東京都の中でも下町、昔からこの地に住んでいる人も多くいる地域です。

 堀切小が取り組んでいる研究は「食育」です。総合的な学習の時間の学習をより効果的に、有意義なものにするにはどうしたらよいか。堀切小の食育を見ると、ヒントが見えてきます。
「私の方針の柱にはコラボレーション、協働というものがあります。学校内での協働だけでなく、学校と保護者、地域社会との協働を前面に出しています」
 このように語るのは堀切小学校 谷口義弘校長。堀切小の食育はさまざまな人が参加します。その取り組みを目にすると、「繋がり」というキーワードが浮かび上がってきます。

■八百屋さんもおばあちゃんも食育の指導に参加

 堀切小の食育の特徴を表す「繋がり」は、まずは「学校」と「地域」「保護者」との間にあります。2007年12月、堀切小では「お雑煮」を作りました。
「堀切には古くからこの地にお住まいの方がいらっしゃいます。そこで、子どもたちに家庭で引き継がれている味は何かをテーマにお雑煮を調べてもらいました」
 堀切小の研究主任、武藤未千子教諭はその地域や家庭の味が表れやすいものとして、お雑煮に着目しました。予想通り、調べた結果、堀切には伝統の味があることがわかりました。子どもたちの話をまとめることで、かつおだしをベースにした堀切のお雑煮を見つけることができたのです。
 でも、全員が同じレシピで同じものを作るのでは物足りません。そこで、基本のお雑煮に一品足して、各班でオリジナルのお雑煮を作り上げることにしました。子どもたちは事前の調べ学習で、お正月の食材には願いがこもっていることを知りました。「元気で長生き→えび」「運が上がるように→しいたけ」など、それぞれの班ごとに話し合い、お雑煮に食材を加えることで、自分たちの願いを込めました。

 地域との繋がりもあります。お雑煮にといえば、小松菜がつきもの。堀切小には中央卸売市場 足立市場で働く方が訪れました。東京都には「いちば食育応援隊」といって、市場で働く方たちが出向いて、農産物、水産物、食肉、花きや市場流通に関するお話や料理講習などを行う事業があります。市場で働く人は、品質を見極め、値を決める「目きき」です。話を聞いた子どもたちは小松菜を見る目が肥えたようです。

 いよいよ、お雑煮の試食の日が近づいてきました。餅をついたのは、地域の方々です。もち米を蒸し、うすと杵でお餅をつきました。そのお餅を使ってお雑煮を子どもたちと作ってくれたのは、保護者の方とおばあさんでした。
「お雑煮を作る当日は、おかあさんがおばあちゃんのところに、作り方を習いに行く姿もありました」(武藤教諭)
 学校と子ども、そして保護者の「繋がり」がお雑煮作りを成功させました。

■人との繋がり、教科同士の繋がり

 ある日、武藤教諭はあるコンテストの募集要項を目にしました。それは、「全国小学生食育授業・料理コンテスト」。食育授業の中でも、地域の伝統的食文化の維持や継承をテーマとした作品を募集していました。まさに、堀切小の取り組みは食文化の維持や継承。募集の内容に合致しています。
「コンテストのことを知りましたが、しばらくは応募せずにいました。とはいえ、心の中で引っかかるものがあったのも事実です」(武藤教諭)
 コンテストの募集締め切り一週間前、武藤教諭は迷った末、校長に応募しようか相談しました。
「やってみたらいい」
 教師たちの「やりたい」という意志には「ノー」と言わない谷口校長。背中を押される形で、武藤教諭は応募しました。

 左:葛飾区立堀切小学校 谷口義弘校長   右:研究主任 武藤未千子教諭
左:葛飾区立堀切小学校 谷口義弘校長
右:研究主任 武藤未千子教諭

 ところで、堀切小の食育の特徴を表す「繋がり」。もう一つには教科間の繋がりがあります。食育は主に、総合的な学習の時間に学習が進められます。ただし、単発ではなく、他教科と繋がりを持たせているところに特徴があります。例えば、国語の教科書には大豆の話があります。すると、食育では大豆の授業を実施します。お雑煮の材料を買う際も、社会で地元の商店街について学んだことが活かされています。子どもたちは事前にお店を見学し、インタビューをしていたのです。
 また、理科でお米の栽培を学習し、図工でわらを使った工作をしました。これは、お雑煮のもち米に繋がります。また、道徳では風呂敷について学び、食育では重箱を風呂敷で包んだりもしました。

「各教科で勉強してきたことを単発で終わらせずに、繋げたいと思っていました」(武藤教諭)
「総合的な学習の時間をより機能させるには、他の教科の授業で身につけた技能や知識をいかに関連付けて、活用するかが重要です。子どもたちの探究心を揺り起こして、最後にしっかりと表現する。この組み立てができる教員がいるかどうかで、総合的な学習の時間は変わってきます」(谷口校長)
 各教科単発ではなく、武藤教諭は一つの学習をどこに関連付けられるかを考えながら授業を組んでいます。

本校は「協働」を重視しています
本校は「協働」を重視しています

社会、国語それぞれで学んだことを食育に活かします
社会、国語それぞれで学んだことを食育に活かします

 2008年3月、東京・渋谷の電力館で、第2回全国小学生食育授業・料理コンテストの表彰式が行われました。表彰式の前に、応募していたコンテストの結果の知らせが来ました。なんと、堀切小は授業部門『地産地消~地域の伝統的食文化を学ぶ~』で最優秀賞に輝きました。堀切小に繋がるさまざまな人たち。そして、互いに繋がりあう教科。これらが一体となった結果が、大賞をもたらしたといえましょう。

(取材・文 江口 陽子)