森林を破壊しない木材を調達
~フェアウッドという取り組み~

2008/10/27

「日本は木材の大量消費国です。しかも、国内需要の八割が海外からの輸入に頼っています」
 このように語るのは、財団法人 地球・人間環境フォーラムの坂本有希さん。日本の木材輸入量は多い。ですから、積極的に森林保全に取り組むことで、世界に大きく貢献できるチャンスがあるといいます。

 ところで、普段の生活で電気製品を選ぶ際、私たちはエネルギー消費量が少ないものを優先して買うことで、環境への配慮ができることを知っています。でも、家具などの木材製品を買うとき、「世界の森林を守る」という視点で選ぶ行為は未だ充分広まっているとはいえません。
「世界の森林に目を向けないというのは、あまりにも無責任ではないか、と思うときがあります」(坂本さん、以下同)
 そこで、坂本さんたちが展開している活動が「フェアウッド・キャンペーン」。2002年、森林保全をテーマに始まりました。
 これは紙や家具など、私たちの生活を支えている木材製品の買い方を少し変えることで、世界の森林の状況を良くしていこうというコンセプトのもと、活動が繰り広げられています。
 例えば家具。日本ではタモ・ナラなどが高級家具材として好まれていますが、これらの樹種の多くは極東ロシアで伐採され、中国で加工され、日本に輸入されています。海外で高い値のつくタモやナラは違法伐採の対象になりやすく、トラやヒョウなどの生き物も暮らす豊かな森を減少させる原因にもなっている、という指摘もあります。机やテーブルを買う人が、その原料となる木材の出所に目をむけることが、生産地での森林状況を改善することにつながると、坂本さんたちが展開しているフェアウッドでは考えています。

■政府や民間企業も取り組み始める

 坂本さんたちは大手企業や政府を中心に働きかけてきました。活動の一つは、木材に対する意識を高めることです。例えば、世界全体を見渡すと、違法伐採された木材から作られた製品があります。無秩序な伐採が原因で、失われた森林がたくさんあるのです。
「ヨーロッパの市場ではFSCというマークを選んで買う人が一定の層います」
 このFSCというのは、森林管理協議会が評価・認証する森林認証制度です。適正に管理された森林から産出した木材などにのみ認証マークがつけられます。消費者は認証マークがついたものを選べば、合法性はもちろんのこと持続可能性についても確認でき、過度の森林伐採、違法伐採による木材の購入を防止することができます。日本でも、2000年頃から認証を受ける林業経営者が出てきました。
「フェアウッドでは、購入している木材のリスクを確認しましょう、認証マークがついたものなど、安全性が確認されたものを率先して買いましょう、と働きかけています」

 働きかけの成果は日本政府にも及びました。もともと、日本では2001年から「グリーン購入法」が施行されています。国や地方公共団体、その他公的機関は率先して環境負荷の少ないものを購入する事が定められているのです。そこに、2006年4月から、世界の違法伐採問題への対策として、木材、木材製品は合法性と持続可能性が証明されたものを購入しなければならないという措置が導入されたのです。

 フェアウッド・キャンペーンの働きかけは、民間企業も受け入れ始めています。積水ハウスは木造、鉄骨などの大手住宅メーカー。フェアウッドの趣旨を理解し、企業として自ら木材調達方針を定めました。
「積水ハウスさんは住宅を建てるために使う木材が相当量あります。木材について、持続可能性におけるリスクを確認してから購入するよう、『持続可能性を支える10の調達指針』を設け、実践しています。これは画期的なことです。政府のグリーン購入法の改定、積水ハウスさんなどの民間企業の木材調達方針策定は、フェアウッド・キャンペーンが受け入れられた証だと認識しています」

「フェアウッド・キャンペーン」を推進する坂本有希さん
「フェアウッド・キャンペーン」を推進する坂本有希さん

 フェアウッド・キャンペーンを実施するにあたっては、ヨーロッパを参考にしたといいます。ヨーロッパは環境問題に対する意識が高く、森林保全への取り組みが進んでいるからです。
「今は欧州のやり方を参考にしているとこもあります。でも、真似ているだけでは日本に根付かない部分もあると思うので、今後は日本ならではのやり方を見つけて、進めていきたいですね」
 このように語る坂本さん。以前、ヨーロッパに行き、現地で学んだこともあります。英国王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)は森林伐採について、年に二回、会合を開いています。この会合に坂本さんは出席しました。

「私が行ったときは、参加人数は200人くらいいました。二日間もの間、行政、企業、NGOなどさまざまな立場の人が、みんな熱心にディスカッションしています。それは日本のような予定調和な会議とはまったく異なるものでした。問題点を話し合い、次のアクションに繋げていくわけですが、議論に参加しながら私は非常に感動しました。森林だけでなく、環境を国の政策として世界をリードするのだ、という欧州の意気込みに深く感銘しました。正直に言いますと、日本はこのままでは取り残されてしまうような危機感も感じました」
 会合のため、世界から集まった企業は小売業から木材輸入商社まで多数いたといいます。そのような中、活発に議論を交わすことが、自分は何をすべきかを熟慮する機会となったのです。坂本さんがこのとき深く感じたことが今のフェアウッド・キャンペーンに活かされているといえます。

(取材・文 江口 陽子)

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木材から森を学ぼう(グリーン木材調達キャンペーン&フェアウッド出前講座)