埋め立てゴミの出ない工場

2008/11/25

 環境問題とひと言でいっても、さまざまな分野にわたります。中でも、埋め立てゴミは土壌、地下水の汚染、悪臭など、環境問題の原因になっています。廃棄物問題として埋め立てゴミをいかにして減らすか。これは私たちが取り組まなければならない大きな問題です。環境省の報告によると、2005年度、日本国内では1年間に2400万トンも産業廃棄物が埋め立てられたといいます。現在、多くの企業が埋め立てゴミを減らそうと取り組んでいます。

 今回紹介するキヤノンは埋め立てゴミゼロ達成した会社です。キヤノンは1990年当時、3万5000トンもの埋め立て処分が必要なゴミを排出していました。これは富士山9個分にあたります。このゴミをなんとか減らそうと2001年に埋め立て廃棄物ゼロ活動を開始しました。そして、2003年12月、国内全生産拠点38箇所で埋め立てゴミゼロを達成。さらには2005年12月、海外全生産拠点17箇所でも達成しました。

 ところで、環境問題のキーワードに「3R」というものがあります。ゴミそのものの発生を減らす・リデュース(Reduce)、再利用する・リユース(Reuse)、そして再資源化のリサイクル(Recycle)の3つです。ゴミを減らすのに有効だといわれている「3R」ですが、行き当たりばったり思いつきのまま進めても、環境への配慮として効果がないときもあります。例えば、リサイクルはゴミを減らすための有効手段だとされています。だからといって、何でもかんでも再資源化を進めればよいものではありません。

 再資源として利用するためには対象となる物質を細かく砕くケースもあります。裁断するには、機械のある場所に物を運ばなければなりません。トラックを運転すれば、CO2が排出され、環境負荷がかかります。また、機械を運転するため電力が消費され、これが結果としてCO2排出につながります。リサイクルで減るはずの環境負荷がかえって増えてしまうこともあります。

 また、3Rを実行するにあたり、お金がかかることもあります。環境を良くするために、たくさんのお金を使い、結果として製品の値段を高くしなければならなくなってしまう。これは消費者にとってうれしいことではありません。

 ここにゴミを減らすための難しい点があります。採算が取れないことを理由に消極的になってしまう企業も一部にあります。

 キヤノンはなるべく多くの工夫を加えることで、少しでも効果が高くなるように知恵を使っています。その工夫にキヤノンのすごさが現れています。


プリンターの電源カバー。複写機の一部が使われている
プリンターの電源カバー。複写機の一部が使われている

 写真はキヤノンのプリンターの電源カバーです。実は、この材料には、回収複写機の一部が使われています。今までだったらキヤノン以外のところにリサイクルに出されていた複写機が利用されているのです。回収材料は樹脂メーカーと協力して高い機能に変えて使います。複写機はプリンターのプラスチック部品だけでなく、電卓の部品の材料にもなっています。

 ゴミになる製品を別の材料に使えばいい。とても簡単に思えるでしょう。でも、現実はそんなに簡単にいかないのです。

 例えば、複写機。前面部分はお客さんの目に留まりやすいところです。ここに、使い古した複写機のリサイクル材を利用すると、新品なのに薄汚れた感じになってしまいます。見た目が悪いと、お客さんの買いたいという気持ちは薄らいでしまいます。

 そこで、キヤノンは考えました。外側のお客さんの目につくところに新しい材料を使って、内側の見えない部分にリサイクルの材料を使えば良い。リサイクルの材料を新しい材料ではさめば見た目もきれいだし、リサイクルした材料も使える。キヤノンは成型メーカーと協力して、「サンドイッチ成形技術」という技術を使ってさらにリサイクルを広げました。


環境本部 環境推進センター 部長 上木 將雄 氏
環境本部 環境推進センター 部長 上木 將雄 氏

 今紹介した技術はほんの一部。キヤノンはたくさんの知恵を出し合い、考え抜いた結果を行動に移しています。環境への配慮としてより効果が高い選択肢は何か。工夫を加えることで、今までできなかったリサイクルが可能になるのではないか。もっとも良い解を見つけて行動する。これがキヤノンの考え方です。

 先に紹介した技術のほかにも、事業部採算制という組織の壁を超える、製品設計の初期段階へフィードバックするなど、小手先ではなく組織全体での取り組みも実施しています。そして、今まで不可能だったことを可能にしてきました。その結果が埋め立てゴミゼロの達成に繋がったのです。

環境本部 環境企画センター 部長 中村 和利 氏
環境本部 環境企画センター 部長 中村 和利 氏

 最後に、ベルマーク活動の参加について解説します。現在、ベルマーク活動に参加している学校はたくさんあります。キヤノンでは環境保護と教育支援活動の推進を図るために、カートリッジ(インク、トナー)の回収を通じてベルマーク運動に参加しています。学校が使用済みのキヤノンのカートリッジを集めて回収すると、キヤノンからベルマーク点数が付与されます※。子どもたちが集めたカートリッジはゴミにならずに、キヤノンでもう一度利用されます。そして、学校はベルマークで備品などを買い、教育にも役立てています。

環境本部 中村部長(左)、上木部長(右)
環境本部 中村部長(左)、上木部長(右)

ゴミの分別は基本。事業所によっては64種類に分類している
ゴミの分別は基本。事業所によっては64種類に分類している


※この運動はベルマーク教育助成財団に登録されている学校のみが対象となります。


(取材・文 江口陽子)