日本初の「環境循環型農業」が生まれた日
~イトーヨーカドーの環境への取り組み~

2008/12/21

 10月のある週末、千葉県にあるイトーヨーカドー五香店に、小学生の男の子が母親とともに野菜売り場を訪ねました。
「これは僕たちが収穫した大根なんだよ」
 男の子がうれしそうに母親に話しました。男の子が母親に教えた大根はイトーヨーカドーが運営している直営農場「セブンファーム富里」で収穫されたものです。

 8月、イトーヨーカドーは千葉県富里市の農業協同組合と協力して農業生産法人「セブンファーム富里」を設立。直営農場の運営を始めました。なぜ、小売業であるイトーヨーカドーが農業に取り組んだのでしょうか。きっかけは環境への配慮からだといいます。
「食料の約60%を海外に頼りながら、それでも大量の食べものを捨てている。これが、日本の現実です。私たちスーパーも残念ではありますが、例外ではありません」
 このように語るのは、セブン&アイ・ホールディングス 広報センターの逸見弘剛さんです。

 イトーヨーカドーに限らず、多くのスーパーでは食品のゴミである食品残渣(ざんさ)を出しています。イトーヨーカドーの場合、その内訳は野菜がことのほか多く、全体の8割を占めるといいます。例えば、野菜売り場に並ぶキャベツ。お店に入ってきた状態では店頭に並べられません。作業場で外側の皮をはがして、初めてキャベツらしくなります。そのほか、売れ残りや見た目が悪い商品は捨てなくてはなりません。多い店では食品残渣は300kgにもなるといいます。この食品残渣を何とかしたい。どのような取り組みをしたらよいのかを考えました。


発売りの様子
発売りの様子。大根は子どもたちが収穫した。

リサイクルループの図
リサイクルループの図。

■肥料を作るだけで終わらせない
 その結果、イトーヨーカドーは食品残渣をゴミではなく、資源だと捉えたらどうだろう。このように考え、食品のゴミを肥料や動物のえさである飼料に変えることにしました。もともと、セブン&アイ・ホールディングスのセブン-イレブンでは販売期限が切れた弁当を集荷して、リサイクルにまわしていました。千葉県のお店では、千葉にあるアグリガイアシステムというリサイクル工場が本来なら焼却処分される弁当を肥料や飼料にしていました。

 もともと、捨てるはずの弁当を原材料にしているので、同じくらいの品質の堆肥(肥料)と比べて安くできます。しかも、質がいい。セブン-イレブンとアグリガイヤの取り組みは高い評価をもらっていました。ならば、セブン-イレブンだけでなく、イトーヨーカドーも食品残渣をアグリガイヤに入れたらいいのではないか。と、いう声が上がり、千葉県のイトーヨーカドーは食品残渣をリサイクルすることにしました。

 もともと、捨てるはずの弁当を原材料にしているので、同じくらいの品質の堆肥(肥料)と比べて安くできます。しかも、質がいい。セブン-イレブンとアグリガイアシステムの取り組みは高い評価をもらっていました。ならば、セブン-イレブンだけでなく、イトーヨーカドーも食品残渣をアグリガイアシステムに入れたらいいのではないか。と、いう声が上がり、千葉県のイトーヨーカドーは食品残渣をリサイクルすることにしました。

 食品残渣が肥料や飼料に生まれ変わる。イトーヨーカドーはこれだけで満足しませんでした。野菜からできた肥料は、野菜を作るのに適している。ならば、この作られた肥料で、野菜を作ったらどうだろうか。そして、できた野菜をイトーヨーカドーの店頭へ並べよう。地元の店に運べば、輸送費もかからない。しかも、イトーヨーカドーの食品リサイクルへの取り組みがお客様にも見える形になるのです。

 でも、農業は誰でもが簡単にできるものではありません。関連の法律が多数存在し、定められた要件に合うように、対応しなければなりません。しかも、作物を作るといっても、お店に並べる商品。お客様に満足していただくのに十分な品質でなければいけません。イトーヨーカドーは販売のプロではありますが、農業のプロではありません。そこで、千葉県富里市の農業協同組合と地元の農家という農業のプロフェッショナルの協力を得て、作物を作ることになりました。このようにして日本初の「環境循環型農業」が誕生したのです。大切な食べものが肥料になって、野菜作りの役に立つ。そこからできた野菜が低価格でお客様のもとに届く。このような循環が出来上がりました。

「お客様の評判はとても好評です。何回も店頭に並べている店舗では、認知度も上がりました。今日はセブンファームの商品はないのか、というお客様の声が入るようになりました」(逸見さん)
 これからは埼玉や神奈川にも広げていきたい、と逸見さんは語ります。千葉県だけでなく、近所のイトーヨーカドーにも地元のセブンファームから採れたての野菜の届く日が来るかもしれません。
(取材・文 江口 陽子)

セブン&アイ・ホールディングス 広報センター 逸見弘剛さん

セブン&アイ・ホールディングス 広報センター 逸見弘剛さん