放課後だからできる環境教育
~21世紀子ども放課後環境教育プロジェクト~

2009/02/25

 子どもたちに環境のことを伝えたい。地球温暖化や気候変動のこと、そして自然保護や生態系の問題など。でも、子どもは正直です。楽しい話ならば目を輝かせて聞き入るのに、つまらないと感じると、とたんにあくびが出てしまいます。
 どのようにして、子どもたちに環境のことを伝えていったらいいのか。これは、学校の先生だけでなく、保護者、地域の大人たち。みんなの課題でもあります。


「環境教育において、正しい理論や理屈を教えることは大事な要素です。が、まずは子どもたちが環境に関心を抱くことが先にあると思います」
 このように語るのは、環境省 環境教育推進室 鈴木弘幸さんです。一般の環境教育に足りない視点はどこか。そして、何をどのようにして伝えるべきか。毎日、鈴木さんは自分たちにできることを考え、検討していました。そして、たどり着いた結論が「環境に興味を持ってもらうこと」。最初は難しいことなんて知らなくてもいい。興味さえあれば、いずれ地球温暖化や水、森林など、さまざまな問題について、子どもは自分から資料を読み、理解するようになるだろう。そのための基礎になる部分が必要だ。このように鈴木さんは考えました。


■1年から6年生まで、地域住民も参加

 ASEEP(アシープ)というプロジェクトがあります。「21世紀子ども放課後環境教育プロジェクト」という名前がついています。これは環境省が推進する、子どもたちに環境教育の機会を与えることを目的とした施策のひとつです。鈴木さんたちが推進しているプロジェクトです。
 プログラムが子どもたちの手に届いたのは2008年11月。できたてのコンテンツ、4つを提供しています。
「環境省が推進している教育プログラムだから、まじめで面白くないのではないか、と思うでしょう」
 鈴木さんは笑みを浮かべ、プログラムの紹介を始めました。
「ここにプログラムキットが入っています」
 段ボール箱をあけると、袋が4つ。
「何が入っていると思いますか」
 袋を開けた鈴木さんが手にしたものは、意外にも、カードやサイコロ、フェイスペイントのペンといった子どもたちが大好きなものばかりです。アシープで用意しているプログラムは「カードゲーム」「体を動かす遊び」など、遊んで楽しむものが中心になっています。椅子取りゲームを応用した「低炭素バスケット」。買い物ゲームからエコを考える「えこちょいす」など、どれも「子どもが大好きな遊び」の要素が仕掛けられてあります。
 これらのプログラムは「放課後子ども教室」といって、放課後や週末等に小学校などに設置される教室で利用されます。

「環境教育では、1年から6年生までが一緒に考え、そこに地域の人も加わるといった、『ともに学ぶ』場面が少ないのではないか、と感じていました。そんな時、ちょうど文部科学省と厚生労働省が連携して推進している『子ども放課後プラン』が適していると思い、進めることにしました」(鈴木さん)

 学校の教科ではなく、放課後だからできることは何か。この放課後子ども教室は、地域住民や退職教員といった年配者から教師を目指す大学生まで、さまざまな年齢層がスタッフとして参加します。昔の人の「もったいない精神」やいい意味での昔の話を直接伝える機会にもなります。地域の大人が持っているすばらしい部分と、子どもたちを繋ぎたい。ここに狙いの一つがあると鈴木さんは語ります。


低炭素バスケット

「低炭素バスケット」は椅子取りゲームの一種、「フルーツバスケット」を応用している。ゲームの説明用ポスターとカード


鈴木弘幸さん

環境省総合環境政策局環境教育推進室 鈴木弘幸さん。アシープをプラニングした


■現場での使いやすさにも配慮

「子どもが使うものだから、子どもに夢を与えたいという考えがありました」
 ゲーム形式の教材ならば、みんなで楽しめるだろう。そのような思いで、プログラムの制作が進みました。ゲームの一つ、「節水大作戦」は子どもたちに大人気です。まず、フェイスペイントのペンで、顔に絵を描きます。何を描いてもかまいません。時間が来たら、ペイントはストップ。そこからが勝負の始まりです。この顔に描いた絵に対して、いかに水を使わないで落とすか。工夫しながら、落としていくというゲームです。水道の水を出しっ放しにしたらその時点で「アウト」です。もっと水を少なくする方法を考えなくてはいけません。このゲームの教材には、霧吹きが入っています。

「霧吹きで、シュッとすれば、少ない水で落とせるね」
「顔に水をスプレーするより、スポンジに水をスプレーして、スポンジでゴシゴシしたほうがいいんじゃないか」
 子どもたちはそれぞれアイデアを出して、試してみます。ゲームを楽しむことは、水の使う量を少なくすることを遊びながら考える機会になります。

 指導手順や要領はDVDで、誰でも取り組めるように分かりやすく示されています。また、試行教室では、環境省から環境カウンセラーが派遣されるなど、現場での導入がスムースにいくように工夫されています。ゲームは途中参加、途中退席か容易にできるものです。さまざまな点で、放課後子ども教室に適したプログラムだといえます。
「今後は、ビデオなど映像を使った教材の制作も考えています」
 コンテンツの充実に向けて、さらに鈴木さんたちは進んでいく姿がうかがえました。21世紀子ども放課後環境教育プロジェクトがますます盛んになりそうです。
(取材・文 江口陽子)


ハコイヌ

ダンボールの犬は「ハコイヌ」。使命は全国の子どもたちに環境教育のメッセージを伝えること。ここにも「夢のあるストーリー」というこだわりが表れている