いきものマップいまむかし: 選者のことば

小学生、それも低学年のものに力作が目立ちました。いきものマップ制作は生活科の教材として非常に適しているからかもしれません。生物のことが学べ(理科)、お年寄りの話を聞いて、昔の地理や生活の姿も学べる(社会)のですから、いきおい先生方の指導にも力が入ります。それにこどもたちがよく答えていました。
地図を描き、そこに生物の絵を描き込んでいくことにより、子供たちの体の中にイメージが定着すると思われます。学年が高くなるほど生物はすべてディジカメの写真を貼り付けた作品が多くなりましたが、これはそれほど歓迎する傾向ではないと感じました。

本川達雄(生物学者/東京工業大学大学教授)

生き物の多様性と分布状況の今昔を調査するというテーマは、我々、保全生態学に関わる研究者としても大変興味深く、それぞれのチームの出品物を楽しく拝見させていただきました。小学生から高校生まで、様々な年齢層のチームが思い思いの方法で調査して、解析方法にも工夫を凝らして、いかに分かりやすく発表するかという点に尽力している点が伝わりました。その意味でどれも優越つけがたく、選考には苦労しました。
資料を見ていて、現代の子供達はもはやかつての日本の自然風景を、先人たちからの伝承でしか知ることができなくなっていることを強く感じさせられました。この伝承すらも、もう次第に難しくなってきています。空間と時間を超えた「いきものマップ」の作成をこれからも広く、長く続けることで、日本の本来の自然風景を少しでも多く記録としてとどめておくことは、これからの日本の自然管理を考える上でも大切な活動だと思います。またそうした活動を、原風景を知らない子供達が自ら行うことによって、その価値を体感するということは自然観の育成の観点からも望ましいことです。
今後もこの活動がさらに発展していくことを心から願っています。

五箇公一(生態学者/国立環境研究所)

今回のすべての応募作品に言えることですが、子どもたちが、わくわくしながら、いきものの観察をした様子が伝わってきました。
地球温暖化による「地域の変化」を一生懸命調べて、作品に仕上げ、報告してくれた、すべての応募者に敬意を表したいと思います。

山本良一(東京大学生生産技術研究所教授/『いきものがたり』企画監修)

「身近な自然環境を調べる」と一言で言っても、昔といまの違いを色んな人に聞いたり、見つけた生き物の名前や生態を調べたり・・・と相当な時間と力をかけなければ、完成できないテーマだったと思います。こうした難易度の高いテーマに対して、地域の方々や先生、ご家族の皆さんを巻き込みながら果敢に取組んでくださったことに敬意と感謝の気持ちを表します。今回、小学生からの応募に力作が多く感心させられました。本を編集するという立場からのコメントですが、他の人にインタビューしたり、写真を撮ったり、イラストを描いたり、マップをレイアウトしたり・・・といった作業を通じて、「調べたことを人に伝える」ことの大切さ、難しさ、楽しさを学べる機会になったとも思いますので、ぜひ今回の体験をこれからも活かしていってくださったら嬉しいです。

上田壮一(Think the Earthプロジェクト/『いきものがたり』編集ディレクター)