いきものマップいま・むかし

今回の企画、“いきものマップ「いま・むかし」”は、子どもたちが身近な自然環境の調査を通してその変化や問題点について学んでもらい、地球規模の問題(温暖化・生物多様性の崩壊)を考える入り口になれば、という思いをこめて募集しました。「いま」のマップを作成することにより、自分たちの住む地域の自然への理解と愛着を深めてもらい、また「昔」のマップを作ることにより、それを作る過程で世代間を越えたコミュニケーション(おじいさんやおばあさんに話を聞いたり、近所の人を取材したり)を経験してもらうことにも主眼をおいていました。地域ごとに違う生きものが見られたり、今と昔での地形が変わっていたり、たくさんの発見がありました。
ご応募いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

■選考委員
  • 本川達雄:生物学者/東京工業大学大学教授
  • 五箇公一:生態学者/国立環境研究所
  • 山本良一:東京大学生生産技術研究所教授/『いきものがたり』企画監修
  • 上田壮一:Think the Earthプロジェクト/『いきものがたり』編集ディレクター

大賞

加賀市立金明小学校

[講 評]
文句なしの大賞です。じつによく調べてあります。グループごとに責任をもって各区域のことをていねいに調べ、個々の生物についても、とてもよく調べてあります。地図をつくるだけではなく、昔と今の違いを冊子にしてまとめたのも、よいアイデアです。文責として、一人一人が責任を明らかにしているのは、とてもよい。
記入用のフォーマットを先生が用意されていますが、これがあったからこそ、ここまできちんとできたのであり、先生のご指導に感謝します。生活科として取り組んでおられますが、過去のことを知る社会の面と、生物としての理科の面の両方がうまいぐあいに生かされた、じつによい生活科の教え方だと感心しました。
のぞむらくは、地図に、どのような植物が生えていたか(植生)が分かるようになっていると、それとそこで見られる動物の関係が見えてくるようになって、よりよかったと思います。

本川達雄(生物学者/東京工業大学大学教授)

[講 評]
情報量がすごい!
今回の企画の趣旨をよく理解している。「昔と今の違い」や「お家の方から聞いた話」の視点が良い。昔は、「青い人魂(ヒトダマ)?が飛んでいた」という記述が笑えました・・・。教室ぐるみ、学校ぐるみ、地域ぐるみで取り組んでいる姿勢が好ましい。

五箇公一(生態学者/国立環境研究所)

[講 評]
5地区、5チームに分けて、いまマップとむかしマップを作成し、それぞれ写真とイラストでしっかりとした調査をされています。また、マップだけでなく冊子も作成されており、昔と今の違い、お家の方に伺った話、地区別のレポートを詳しく読むことができるなど、内容も充実しています。楽しいイラストもあって、先生や生徒さんたちの工夫が随所に見られました。また、地域の方とのコミュニケーションが活発に行われた様子が伝わってきます。そのため幅の広い視野のレポートになっていることも大きな特徴です。昔といまの地図に、生き物だけでなく、環境の変化が詳しく描き込まれていると、もっと面白い発見があったのではないかと思います。

上田壮一(Think the Earthプロジェクト/『いきものがたり』編集ディレクター)

優秀賞

安城市今池小学校

[講 評]
とてもきれいな地図を作りました。見栄えがします。今の生物をよく調べています。一つ一つの生物について調べたことを、冊子にしたのはとても良いアイデアでした。天野さんや小鹿先生に聞いた話は、とっても面白かった。できれば他のもっと多くの人にも話を聞けたらと、残念です。とくに昔の植物についてはまったく調べてありません。地図に、ここにはどんな植物が生えているか、土地の使い方がどうなっているか(田んぼか畑か住宅かなど)がわかるようにしてあると、そこに住む動物との関係が分かってきて、より理解が深まったろうと思います。

本川達雄(生物学者/東京工業大学大学教授)

[講 評]
地図のまとめ方がとてもきれい。冊子の情報も充実している。外来種問題にも触れている点が良い。今と昔で生物相が変化した原因について考察している点が好ましい。

五箇公一(生態学者/国立環境研究所)

[講 評]
地図の描き方や、まとめ方の美しさという点で、群を抜いた出来映えでした。地図だけでなく、冊子に分けて詳しくレポートされている点からも意気込みを感じられました。また、ただ調べるだけでなく生態の解説や、外来種の問題にも踏み込んでおり、生物全般への興味関心の高さが伺えます。学校の先生から昔の話が聞けていますが、今後は地域の人たちに聞くなど、さらに広範囲で調査を続けていってみてください。

上田壮一(Think the Earthプロジェクト/『いきものがたり』編集ディレクター)

特別賞

室蘭市立陣屋小学校

[講 評]
昔と今の道路の違いや、土地の使い方の違いが、そして生き物の違いがじつにはっきりと分かるとても印象の強い地図に仕上がっています。上出来です。以下の点を充実するともっとよくなったでしょう。

  • 今の地図をもう少しくわしく。
  • 一つ一つの生物がどんなものか、地図に書くだけではなく、その生物について調べた冊子を作ると、より理解が深まるでしょう。
  • 昔の田んぼには、もっと動物がいたと思われます。お年寄りにもっとくわしく話を聞ければよかった。

本川達雄(生物学者/東京工業大学大学教授)

[講 評]
地図による今昔の違いが分かり易い。冊子がないのが、少し寂しい。今と昔の違いについて、その理由や、景観の変化について記述があると良い。白い砂浜がコンビナートに変化しているという点は、見ているだけで考えさせられる。

五箇公一(生態学者/国立環境研究所)

[講 評]
海が埋め立てられ工場が建設されたり、山を削りトンネルが掘られたり、田んぼがあったところに街ができたり、と昔と今とで劇的な変化があったことがわかります。かつての風景が、調査をされた皆さんの心の中に生まれたのではないでしょうか。調査方法のレポートや調査結果の分析など、マップを補足する情報があればもっとよくなったと思います。

上田壮一(Think the Earthプロジェクト/『いきものがたり』編集ディレクター)

入賞

水戸市立千波中学校

[講 評]
大変丁寧に今の湖の生物を調査してあります。指標生物について表にしてあるのもよい。ただし、現況についてはすでに他でも賞を得ておられますね。今回は過去との比較が問題になりますが、そこの部分をもっと力を入れていただきたかったと感じます。おじいさんのコメントのみではなく、もっと昔の湖のことが知りたいところです。

本川達雄(生物学者/東京工業大学大学教授)

[講 評]
コンパクトにまとまっているが、もう少し情報量が欲しい(中学生という点を含み)。湖沼環境変化に伴う生物相の変化について詳しく解析、考慮している点が好ましい。

五箇公一(生態学者/国立環境研究所)

[講 評]
千波湖の周辺環境に絞った調査報告で、これまで長い間にわたって継続してこられた調査の蓄積がよく伝わってきました。外来種や富栄養化の問題も取り上げている点や、指標生物を使うなど本格的な調査であることがわかります。ぜひ、今後も続けて研究していってください。

上田壮一(Think the Earthプロジェクト/『いきものがたり』編集ディレクター)

入賞

大阪府立城山高校

[講 評]
さすが高校生ですので、きれいな地図に仕上がっています。ただし高校生ですので、もう少し上のレベルをねらって欲しかった。たとえば、

  • 昔のことの話をもっと書いて欲しかった(地図に描きこむだけではなく、聞き書きの冊子等をつけるとよい)
  • 土地の使い方の違いが昔と今とで分かるようにしてあるとよい。植生の違いが分かれば、それと生物の違いの対応づけができるだろう。
  • 今いる生物は、これだけですか? もっといそうな気がしますが。

本川達雄(生物学者/東京工業大学大学教授)

[講 評]
情報はもっと集められそう。今と昔の違いの解析がほしい。高校生なので、図や文章はとても見やすい。その分、biologicalな解析がないのが惜しい。

五箇公一(生態学者/国立環境研究所)

[講 評]
イラストが美しく、生き物についてもよく調べているが、リストアップで終わっているのが残念。外来種であるブラックバスやブルーギルの絵が描かれていましたが、問題そのものについて触れているとよかった。今後は、高校生ならではの、より分析的なアプローチをしてみてください。

上田壮一(Think the Earthプロジェクト/『いきものがたり』編集ディレクター)

審査風景